美容師は国家資格の取得が必須の仕事ですが、その仕事内容は非常にハードです。
せっかく専門学校に通って国家試験を受けたのに仕事に耐えきれず辞めてしまう方も多いです。就職後3年以内に8割の人が離職するとも言われています。
そこで今回は美容師が異業種へ転職する際、どんな仕事を選べばいいのかについて紹介します。これまでのスキルや経験を活かせる仕事を選びましょう。
美容師の転職におすすめの業界5つ
美容師の転職には2種類あります。1つは美容師として別の美容院に転職する方法。現在勤務している美容院に対して不満がある、美容師としてさらにキャリアアップしたい場合には有効な手段です。
そしてもう1つはまったく別の業界に転職する方法です。美容師の仕事自体に不満がある、別の仕事をしてみたいという場合に有効です。今回は異業種に転職したい方向けに、美容師の転職先としておすすめの業界を紹介します。
これまでの経験をどう異業種に活かせるかを考えてつつ転職活動をおこないましょう。
知識を活かせる美容業界
美容師はヘアケアについての知識が豊富です。ヘアケアだけでなくスキンケアやメイク、コスメ、ファッションについて知る機会も多く、常に時代の最先端のトレンドを知っておくことも仕事のうちの一つです。
トレンドを取り入れたヘアスタイルにしたいお客様の期待に応えるためにも常に美容系の知識を高めていたという方も多いでしょう。また、お客様との会話の中で美容に関する情報を集めやすいのも美容師の特権です。
そんな美容に関する知識を活かせる美容業界の仕事は非常におすすめです。
ヘアケアブランドの販売員やコスメブランドの美容部員、アパレルブランドの販売員、さらにエステ業界に転職する美容師もいます。
ですが販売員や美容部員、エステティシャンなどの仕事は長時間の立ち仕事、接客が必須です。美容師と同じく離職率が高い職種ですので、転職するメリットをよく考えましょう。
資格を活かせるブライダル業界
ブライダル業界の中でもとくにブライダルスタイリストの仕事が人気です。花嫁のドレスや着物などの衣装を選ぶのが主な仕事ですが、結婚式当日や前撮りの際に着付けやヘアセットをおこないます。
美容師免許が必須の求人も多く、注目度も低いため採用されやすいと言えるでしょう。
とくにヘアセットの経験が豊富な方や着物の着付けができる方はブライダル業界の中でもとくに求められています。美容院勤務時代にヘアセットをよくおこなっていた、着付けの資格も持っているという方はブライダル業界もチェックしてみてください。
需要の高い福祉業界
福祉や介護に関連する仕事は今需要が高まっています。少子高齢化の影響から、今後もますますその需要は高くなっていくことでしょう。
美容師として働く中で磨かれた接客スキルやコミュニケーション能力は福祉や介護の現場でも役立ちます。また、福祉や介護の仕事は力仕事、体力仕事も多いですが、美容師として働いてきたタフさがあるなら乗り切れるでしょう。反対に言えば体力が追い付かず美容師を辞めたいという方には不向きな業界です。
福祉や介護の現場はハードだという印象を持つ方も多いですが、夜勤のない施設や待遇のいい施設も増えてきています。資格所有者はさらに待遇がいい施設も多いので、転職に向けて資格の勉強をしておくこともおすすめです。
スキルを活かせるサービス業
美容師は常にお客さまの要望を聞き出し、期待以上の働きをしなければなりません。お客様の悩みを解決するためにさまざまな提案をしたり、自分にできることを増やすために勉強や練習を重ねたりすることもあります。この接客スキル、サービス精神が、サービス業にはぴったりです。
飲食業界やホテル業界などは常に人材不足であり、貴重な人材を確保するために給料が高かったり施設を使用できる権利があったりする求人もあります。
美容師のように一対一で対話を続けるのが苦手な方は、一日に何人ものお客様の相手をするサービス業の方が向いているかもしれません。
ただ、サービス業も土日は休めない、勤務時間が長い、体力仕事が多いといったデメリットがありますので、この条件のもとでも長く働けるかをよく考えて求人をチェックしましょう。
実は美容師に人気の不動産業界
意外かもしれませんが、不動産業界への転職も美容師には人気です。
美容師は常にお客様と一対一で会話をしなければなりません。お客様とじっくり話し合うのが苦痛ではない美容師にとっては、これまでの経験やスキルを活かせる業界と言えるでしょう。
また、美容師の中には立ち仕事をしたくない、デスクワークに転職したいと考えている方も多いです。不動産業界なら基本的には座ったまま、さらに美容師時代に培った接客スキルを活かして働けます。未経験からでも働ける職場が多いのも人気の理由の一つです。
美容師の仕事は辞めたいものの接客自体は好きという方は不動産業界もチェックしてみましょう。
美容師が異業種へ転職する際の注意点
美容師が異業種へ転職する際、ただ美容師を辞めたい、という理由だけで転職すると失敗してしまうかもしれません。
美容師を辞めたいと思っていたときと同じような理由でまた離職してしまう、これまでのスキルを活かせず大変な思いをするということがないよう、異業種への転職は慎重に考えましょう。
今抱えている問題を解決できるか
まずは今どうして美容師を辞めたいと考えているのかを明確にしましょう。
美容師の離職理由にはさまざまなものがあります。労働時間が長い、人間関係をうまく築けない、体力が続かないなど、自分が一番問題だと思っている点を解決できる転職先を選びましょう。
働く上での問題を解決できる仕事に転職できれば、精神的にも肉体的にもストレスなく働き続けられます。転職回数の多さは面接の際不利になることもありますので、長く働ける仕事を選びましょう。
接客業やサービス業、他にも美容業界などは美容師として働く中で身につけたスキルを活かせる仕事が多いです。しかし美容師と同じような理由で離職してしまう方も多いので、同じ理由でまた転職してしまう…ということのないように注意しましょう。
スキルや経験を仕事に活かせるか
美容師としてこれまで培ってきたスキルや経験を次の仕事に活かせるかどうかも考えてみてください。
美容師資格はもちろん、美容やヘアケアの知識、接客スキル、コミュニケーションスキル、マネジメント能力など、次の仕事ではそれらがどのように影響するのかを考えるとより志望動機や自己PRを作りやすくなります。
まったくの異業種でも活用できるスキルがあれば人事担当者からの印象もよく、採用されやすくなるでしょう。
反対に美容師としてのスキルや経験をまったく活かせない業種を選ぶと、専門的な知識が必要な業界では採用されにくいです。
採用されたとしても一からすべて学び直さなければならないので成長しにくく、よほど得意な仕事、自分に合っている職場でない限りまた離職につながりかねません。
キャリアアップできるか
次の仕事でどのようにキャリアアップできるか、将来のビジョンを描いておくことも大切です。
接客業からスタートして商品企画や営業職に異動したい、起業したいなど、人それぞれにキャリアプランがあることでしょう。美容師はマネージャーや店長、独立開業などのキャリアプランがありますが、それよりももっとキャリアアップが望めるという仕事を選ぶことが大切です。
今美容師を辞めたいと思ったから転職するのではなく、この転職が自分の将来にどのように影響していくのかを考えなければなりません。
美容師が転職の際PRできる長所
美容師が異業種へ転職する際は自己PRや志望動機も慎重に考えなければなりません。企業があなたを採用することでどんなメリットがあるのかをしっかり伝えることができれば、採用される確率も高くなります。
自分の強みから自分にぴったりの仕事を見つけるためにも、美容師ならではのスキルや経験を確認しましょう。
接客のスキルが高い
美容師は常にお客様と会話をしながら働いています。お客様の要望をカウンセリングするだけでなく、日常的な会話から人生相談の相手役になることも。もともと接客が苦手な方でも、働くうちに自然と接客スキルが高まっていることが多いです。
このような接客スキルはさまざまな仕事で役立ちます。接客業はもちろん販売業、営業、サービス業などではお客様との会話は欠かせません。
接客が上手いとより売り上げがアップする、企業や店舗、ブランドの印象がよくなる、口コミでさらに顧客獲得を狙えるなどメリットが豊富にあります。
接客が好きな方、次の仕事でも接客をしたい方は、自身の接客スキルの高さをアピールしましょう。
体力がある
美容師は一日中立ったまま働かなければなりません。屈んだり、シャンプーをしたり、無理な体勢になることも少なくありません。また、重たい機材や荷物を運ぶことも多く、自然と体力がつきます。また、体力がある方でないと続けられないでしょう。
体力面の問題から転職したいと考えている方にはおすすめできませんが、体力は問題ない、自信があるという方は体力をアピールするのもいいでしょう。
とくに福祉業界や介護業界は体力仕事が非常に多いです。今後長く働き続けるために需要のある仕事に転職したいという方は、このような業界への転職を考えてみてもいいでしょう。
発想力がある
美容師はお客様に似合うヘアスタイルやカラーを提案する、ヘアアレンジ方法を提案するなど、さまざまな面で発想力が求められます。お客様に喜んでもらうには何をすればいいのかを考えなければならず、常に新しいことに敏感だったり、練習や勉強を欠かさない方も多いです。
経験や知識をもとにした提案は的確なものが多く、実際にお客様に喜んでもらえたという方も多いでしょう。
そんな発想力や提案力をアピールするのもおすすめです。商品を企画する仕事や営業の仕事、プロモーションの仕事ではとくにこのようなスキルを活かせるでしょう。
マネジメント力がある
美容師として勤務を続けているとマネージャーに昇格することもあります。美容院のマネージャーは新人教育や技術指導、シフト管理、経営方針の決定、新メニューやキャンペーンの作成などをおこないます。
このマネージャーとしてのスキルは、美容院以外の転職先でもおおいに役立ちます。店舗マネージャーや施設マネージャーを募集している求人に応募すれば、より自分のスキルを理解してもらえるでしょう。
とくに30代以降の転職は、何かしら特別なスキルを求められることが多いです。マネジメントの経験がある方はしっかりアピールしていきましょう。
美容師の転職理由の中でも多いのは?
美容師の転職理由として多いものを紹介します。
自分に当てはまる理由をチェックした上で、どのような業種に転職すればいいのかを考えてみましょう。
勤務時間や残業が長い
勤務時間の長さ、残業の多さから美容師として働き続けられないと感じ、離職する方は多いです。
シフト制であっても、飛び込みのお客様の対応をしたり閉店後のカット練習や新メニューの会議、研修などがあると残業せざるをえません。研修などの場合は給料がつかないことも多く、不満を感じる方も多いようです。
勤務時間が長いと心身ともにリラックスする自分の時間が取れないだけでなく、家庭がある方にも悪影響です。家事や育児と両立できず、出産を機に離職する女性もいます。
勤務時間の長さから離職を考えている方は残業のない仕事、勤務時間が決まっている仕事を選ぶようにしましょう。残業がどれくらいあるのか、残業手当はつくのかを確認しておくことも大切です。
給料が低い・ボーナスがない
美容師の給料は、固定給にプラスして歩合や残業手当がつくことが多いです。指名があればそれだけ多く稼げますが、指名を取れないと最低限の給料しか受け取れません。また、研修や練習などの残業手当はつきません。
チェーン店などの大手の美容院ではボーナスが出ることもありますが基本的には美容院ではボーナスの制度がなく、給与面に不満を感じて離職するケースです。
この場合、今よりもっと高い収入を目指すなら専門的な知識やスキルを求められる仕事を探すべきです。派遣社員など、時給制で働けて給料の高い勤務形態を変えてみるのもいいでしょう。
給料は高くなくてもいいからサービス残業や研修などのない仕事に就きたいという場合は事務職などがおすすめです。大手企業に就職できれば、月給は下がってもボーナスが支給されることもあります。
接客や人間関係のストレス
美容師になるならお客様との会話は避けては通れません。接客が苦手でも仕事としてこなしていくうちに慣れる方もいますが、どうしても苦手な方は接客を苦にして離職してしまいます。
また、美容院のスタッフ同士の情報交換も仕事をする上では大切です。コミュニケーションが円滑にできないと指示を聞き間違えられたり、上手く理解できずに失敗したり、お客様に迷惑をかけてしまうこともあります。
上下関係も厳しい美容院が多く、そういった人間関係のストレスから離職してしまうケースもあります。
この場合は接客業やサービス業から離れた仕事を探す方がいいでしょう。
事務職や製造業など、お客様とのやり取りが少なく、従業員同士のコミュニケーションも最小限で済む仕事がおすすめです。
美容師から異業種への転職を考えよう
美容師が異業種へ転職する際のおすすめの業種や、転職の際の注意点、さらに転職理由などを紹介しました。
美容師は非常に離職率が高い仕事であり、日々ストレスを抱えたまま発散できずにいる方も多いですよね。今の職場で改善の見込みがない、他の美容院へ転職しても解決しないと感じた場合は異業種への転職も検討しましょう。
これまで培ってきたスキルや知識を活かせる仕事を選べば、未経験の仕事でも比較的スムーズに馴染むことができるでしょう。
今後のキャリアアップのためにも、将来を見据えた転職をすることが大切です。