百貨店に並ぶコーセー、ディオール、資生堂……
美容業界で働きたい人の中には、お気に入りの化粧品会社で働く事に憧れを抱く人も多いものです。
就活生だけでなく、転職先としても人気の化粧品業界。
女性が多く活躍しているイメージが強く、積極的に女性を採用している企業も多いです。
しかし新型コロナウイルスの影響で対面接客が難しいこのご時世、化粧品会社の雇用状況は今後どうなっていくのでしょうか?
今回は現在の化粧品会社について状況、今後の動向や求められる人材を見ていきます。
化粧品業界の業態
化粧品業界の業態は大きく分けてリテールとプロフェッショナルの二つに分類されます。
リテール業態とは……
百貨店やセレクトショップ、ネットショップなどの一般消費向けの業態。
メーカーから直接消費者に販売する方法と、百貨店やドラッグストアなどの外部店舗に卸す方法の二種類があります。
消費者に直接自社店舗からする場合、仲介手数料が発生しないので高利益率となります。いっぽう外部店舗に卸す場合は卸価格での販売となり、店舗側が独自に販売をおこないます。
プロフェッショナル業態とは……
美容室やエステサロンなどの法人向け業態。
サロン専売商品など、業務用の化粧品などを扱います。
卸価格にて美容ディーラーに販売し、ディーラーが店舗や美容室などに販売するのが一般的です。メーカーによってはディーラーを通さず直接サロンなどに販売するところもあります。
化粧品業界の現状
化粧品業界はおもに国産化粧品メーカーと、外資系化粧品メーカーの2つに分類されます。
国産メーカーの商品は中価格帯商品が主流であり、外資系メーカーは高級機能性商品が主流となっています。
外資系メーカーの中には日本国内に製造ラインを持つメーカーもありますが、主に外国からの輸入商品を国内で販売しています。
現在、国内化粧品メーカーでは、売り上げが伸びる企業、伸び悩む企業がはっきり別れているのが現状です。
1位 花王 2127億
2位 資生堂 813億
3位 コーセー 402億
4位 ポーラ・オルビスホールディングス 263億
5位 ロート製薬 230億
6位 ファンケル 141億
7位 ノエビアホールディングス 109億
1位の花王、2位の資生堂で売り上げが3倍近く、3位のコーセーと4位のポーラ・オルビスホールディングスの売り上げが約150憶円違うことからわかるように、売り上げの幅が大きく開いています。
化粧品業界は2013年ごろまで不況の影響や低価格競争の影響などにより、成長は横ばいを示していました。
2013年以降はインバウンドの影響もあり、訪日外国人の日本製の化粧品の売り上げが増加しています。
商品別ではスキンケア商品を中心に売り上げを伸ばしています。
最近では機能性高級化粧品、オールインワン化粧品などの時短化粧品が人気で売り上げを伸ばす傾向があります。
しかし国内の人口減少にともない国内、日本人への売り上げが減少しています。
外資系化粧品メーカー 売り上げランキング (2020年)
会社名 売上(億米ドル)
ロレアル(L’Oreal) 276
ユニリーバ(Unilever) 223
プロクター・アンド・ギャンブル 180
世界ナンバーワンの化粧品会社はフランスのロレアルです。日本円で約3兆円の売り上げを誇り、市場規模は日本ナンバーワンの資生堂の規模の約3倍です。(資生堂は世界第6位)
売り上げ上位の企業ほど海外売り上げの比率が高く、グローバル展開しているのが特徴です。
ロレアルの海外売上率は約60%で日本企業の1.5~2倍です。
化粧品業界の今後
海外進出、環境への配慮、ECサイトなどの導入がカギ
これまでは国内需要だけで十分に売り上げが上がっていましたが、今後は外国人向けの化粧品、海外展開が戦略として重要となるでしょう。
国内メーカーはこぞって海外進出をしていますが、国内の売り上げほど販売経路を持っていないのが現状です。
また環境に配慮した化粧品の製造行程、製品づくりも今後の化粧品業界の課題となります。
パッケージやボトルなどのプラスチックごみ、一部の化粧品成分による環境汚染など化粧品業界を取り巻く環境問題は化粧品業界が取り組むべき大きな課題です。
販売方法はもともとは百貨店やドラッグストアの店舗販売、カタログなどの通信販売、訪問販売などが主流でした。
現在ではそれらにくわえ、自社店舗での販売をメインにしていた化粧品メーカーもインターネットを利用したECサイト、小売り店などの卸にもふみだしています。
デジタルマーケティングを活用した販売網など新たな販売方法を採用したいメーカーが増えています。
そのため最先端のIT知識、技術の使いこなせる人の採用も積極的です。
各社とも厳しい競争の中で独自性の戦略を立ててしのぎを削っているため、チャレンジ精神旺盛な若手従業員は重宝され、さまざまなチャンスを掴みやすいでしょう。
食品メーカーなど異業種業界の参入
化粧品の製造には食品の原料や素材や化学の応用ができるため、最近ではサントリーや味の素など、食品メーカーが参入してきています。
富士フイルムの「アスタリフト」など、食品メーカー以外にも化粧品業界に介入してきています。
富士フイルムはフィルムの材料の一つであるコラーゲンやフィルムの抗酸化物質を化粧品に応用しています。
こうした異業種企業が独自に自社ブランド製品を開発し、自社の販売網で販売することにより、高品質で安心、安全、安価の化粧品を提供することが可能になっています。
化粧品業界の職種と仕事内容
化粧品業界の主な職種は次の5つです。
- 美容部員
- 営業
- マーケティング
- 広報
- 研究開発
簡単に上記の仕事内容についてみていきましょう。
美容部員
美容部員は百貨店やドラッグストアに立つ化粧品販売のプロです。
単なる接客業とはことなり、来客に対してスキンケアのアドバイス、カウンセリングもおこないます。
そのため髪の毛やは肌の専門的知識やケアの技術も必要です。
営業
営業職は自社の商品を百貨店やドラッグストアなどに販売する仕事です。
店を介さず直接エンドユーザーに販売することもあります。
開拓営業ではなく、得意先に対する協力、支援、返品処理やコンサルティング業務などがあります。
そのため商品を売る能力よりも、マメなコミュニケーション能力、他の部署との連携ができる責任感のある人材が求められます。
マーケティング
マーケティング部は化粧品を効率的に販売するための企画、市場調査、販売戦略をおこなう仕事です。
大手企業になるとブランドごとにマーケティングをおこないます。
担当ブランドごとに性質や特徴を理解し、ターゲット層に響く戦略を考える必要があります。
広報
広報、PRとはプレリリースのことであり、PR商材の作成、タイアップの企画管理、プロモーションをおこなう自社の商品の魅力を伝える業務です。
自社の商品だけでなく、商品と世の中の接点を見つけることがなによりも大切です。
また文章で商品の魅力を伝えられることも強みとなるため、ライティング能力があるとなおよいでしょう。
研究開発
研究開発は化粧品の処方開発、設計、試作品の作成などが仕事内容です。
研究内容はおもに
化粧品成分の有効成分を研究する基礎研究
基礎研究をもとに新商品を開発する処方開発
商品の原材料や品質を保持するための分析、改良するための安全性研究
の3つです。
化粧品は消費者の肌に直接触れるものになるため効能や安全性が求められます。
さまざまな素材や成分を調合するため、化学研究の好きな理系大学の卒業生には有利な職種となるでしょう。
現在の化粧品業界の雇用状況(社員)
労働時間と休日
化粧品メーカーの本社や支店のオフィスで働く社員の勤務時間は朝9時~夕方18時までの勤務が一般的です。
他業種の企業と同じようにフレックスタイム制を取り入れている企業も多くあり、業務内容や職務により自由に出社時間や退勤時間を決めれる企業も増えています。
工場勤務や研究職ではオフィス勤務よりも1時間早く始まり、早く終わるところも多いです。
オフィスや工場勤務の休日も他の企業と同じで土日が休みの週休2日制を取り入れているところが多く、祝日も休みの企業が多いです。
年間休日は平均的な120日ほどのところが一般的です。
化粧品メーカーの代表的な休暇は有給休暇や慶弔時の特別休暇、勤続年数に応じて取得できるリフレッシュ休暇、産休や育児休暇などがあります。
お盆や年末年始は工場の稼働を止めることを目的に全社一斉に休みにすることも多いです。
一方営業職は土日は顧客の都合に合わせて動かなければならいこともあります。
化粧品メーカーの中でもっとも勤務時間帯が変則的なのが美容部員です。
美容部員は百貨店やドラッグストアなどの店舗に勤務することが多いため、店舗の営業時間により勤務時間が異なります。
営業時間が長かったり、定休日のない店舗では複数の美容部員がシフト交代制で勤務することが多くあります。
勤務先によって夕方に終わる現場もあれば、夜22時まで勤務のあるところもあり配属店舗によってまちまちです。
休日も百貨店などは平日よりも多くの来店が見込まれるので休日は土日祝に限らず不定期になることも多いです。
残業時間
化粧品メーカーの残業時間が多くなることは滅多にありません。
企業や職種によっても違いがありますが、各社が発表している月の平均残業時間は5~20時間ないとしているところが多いです。
顧客からの急な呼び出しや商品の不備など早急に対処しなければならないときは残業をせざるをえないこともあります。
しかし、日常的に長時間の残業を強いられる職場はあまりないようです。
どの企業もライフワークバランスを重視した働き方積極的に取り入れ、基本的には時間内に仕事を終わらせる傾向が強くなってきています。
労働時間を厳しく管理している企業ではなおさら残業削減に対する意識が強くなってきています。
化粧品業界の仕事は激務なのか?
営業や販売職は数字で成果が見えやすく、ノルマを課されているところもあり心身ともにハードになりやすいことがあります。
大手メーカーの場合、ブランド力が高いためあまり苦労を感じることがないかもしれません。
その他の職種も激務になることは比較的少ないといえますが、次々に商品を開発しなければならないため、新商品の企画、生産期には忙しくなる傾向があります。
中小企業の場合はひとりに任される仕事内容や仕事範囲多岐に渡り、負担が多くなる場合もあります。
勤務先によってはメイン以外の仕事を任されることが多く、激務と感じる人もいます。
化粧品メーカーが求めている人材
化粧品メーカーに興味がある、働きたいと思っているという気持ちだけでは内定獲得はできません。
では実際に化粧品メーカーはどのような人材を求めているのでしょうか?
ここを理解しているかしていないかで化粧品メーカーでの内定獲得が決まるといっても過言ではありません。
化粧品メーカーで働きたい人は参考にしてみてください。
化粧品に興味を持つ人
化粧品メーカーが求める人材は大前提として、化粧品に興味がある人を求めています。
これは化粧品メーカーに限ったことではなく、メーカーで働きたい人はその会社の正しい商品知識を調べておく必要があります。
メーカーはものづくり単体ではなく、PRや販売も仕事なので商品に興味を持っていることも必須条件です。
コミュニケーション能力に長けている人
顧客からのニーズを素早く察知するために化粧品メーカーでは聞き上手な人が重宝されます。
商品開発や企画、販売など他の部署の人とのチーム間でのコミュニケーションを円滑にとれる能力がある人も必要な人材です。
責任感を持って仕事に取り組める人
化粧品は消費者の肌に直接触れるものなので、責任感をもって開発、企画、販売ができる人を求めています。
メーカーにとって商品は会社の顔であるため、商品に欠陥や不備があると企業のイメージが悪くなってしまうことがあります。
どんなことにも注意を払い、責任感を持って仕事に取り組める人材を求めています。
おしゃれで華のある人
人をきれいにする化粧品を扱うため、美意識が高い人が求められます。
化粧品業界の特徴として軽さや華やかさ、若々しさがある人が多いのが多い傾向にあります。
いい意味で「チャラい」ひとが多いのも化粧品メーカーの特徴です。
まとめ
- 化粧品業界は売り上げが伸びており、今後も廃れることが少ない業界
- 食品業界などが美容業界に参入しつつある
- 今後はECサイトや海外進出ができる化粧品メーカーが伸びる見込み
- 美容に興味があり、責任感を持っている聞き上手な人が求められる業界
いかがだったでしょうか。
美容業界で働きたい人はぜひ参考にしてみてくださいね。