美容に関わる臓器として「肝臓」「腎臓」が大きく関わっているということをご存じでしょうか?
肝臓のイメージとして、「お酒を飲む人が気にするべき臓器」というイメージを持つ人も多いのではないのでしょうか。
実は、肝臓には500以上の働きがあり、健康だけでなく、美容に大きく関わる臓器なのです。
美容家の中には「肝臓を制する者は、美容を制する」という人もいるほどです。
今回は、美容と肝臓の関係について詳しく解説していきます。
肝臓の働きとは?
肝臓はおなかの右上にあり、胃の斜め上に位置します。
その重さは約1~1.5㎏ほどあり、臓器の中でも重量のある内臓です。
身体の半分ほどの血液が、静脈・動脈・門脈の3つの血管を通り、肝臓に出入りしています。
身体の中で最も大きな臓器であり、その役割は500以上もあり、私たちの身体を正常に働かせるために多くの酵素を使い、摂取した栄養素を化学変化させることができ、まだまだ肝臓の働きを人工的な装置でおこなうのは難しいといわれています。
肝臓の主な働きには
●解毒
●貯蔵
●胆汁の分泌
●尿素の生成
などがあります。
摂取した栄養を身体で使える形に変化させたり、エネルギーを消費する働きを、代謝といいます。
エネルギーに加工して全身に送り、余ったエネルギーは肝臓に蓄えます。
いざという時はそのエネルギーを分解し、身体を動かします。
肝臓の代謝機能には、ご飯やパンなどん糖質をエネルギーに変える「糖質代謝」、卵や肉・魚などのタンパク質をアミノ酸に変える「タンパク質代謝」、脂質をコレステロールや中性脂肪などに変える「脂質代謝」などがあり、これらの代謝機能が衰えると、肝機能の低下の原因となります。
肝臓の解毒作用には、アルコールやたばこ、アンモニアや乳酸などの身体に良くない働きをする物質を無毒化します。
身体にとって有害な物質を分解し、毒素を抜いて体外に排出します。
アルコールや薬やそのまま吸収すると中毒性が強く、中毒症状やアレルギーを引き起こします。
また、身体の中で有害物質に変換される物質を無毒化します。
肝臓で有害物質を無毒化することにより、身体の外に有害物質が排出され、健康が保たれるのです。
肝臓の機能が低下すると、アレルギーや中毒症状などの様々なトラブルが発生します。
肝臓の貯蔵効果には、血液の貯蔵もしているため、出血時に備えた血液を作り、血液不足を補います。
肝臓のもつ胆汁の分解には、脂肪の消化・吸収に大きな役割をはたしています。
脂肪などは水に溶けないため、上手く吸収されないからです。
胆汁は肝臓から分解される弱アルカリ性の黄色い分泌液であり、その分泌量は1日に1ℓもあります。
胆汁が胆のうで濃縮されると茶色に変化し、胆汁酸やコレステロールなどになり、乳化させ、脂肪の消化・吸収をします。
胆汁は胆のうに送られ、そして貯蔵されます。
貯蔵された胆汁は、食べ物が十二指腸に届くと十二指腸に送られ、消化された老廃物と一緒に便となり排泄されます。
また肝臓では、アンモニアをオルニチン回路により尿素に作り変える働きをします。
尿素の生成はアンモニアの解毒するうえで欠かせないものであり、肝臓機能の低下により尿素が身体に滞ると意識障害などを伴う肝性脳炎などの病気を発症してしまいます。
その他にも、免疫細胞のコントロールや血液調整、体温維持など、様々な役割が肝臓にはあります。
肝臓の細胞が多少壊れてしまっても、働き続けることのできる臓器です。
健康な人であれば、肝臓の30~40%を使用して生活しており、病気などで肝臓の機能が低下していても、肝臓の高い回復機能の代償作用により、働きを維持することができます。
また再生能力が高く、細胞の一部を切り取っても唯一元の大きさまで回復することのできる臓器です。
肝臓はとても再生能力が高くタフな臓器であるため、負担がかかっていても自覚症状として現れにくく、自覚症状が出た時には症状がかなり進んでしまっているということもあります。
そのため肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることもあります。
肝臓と美容の関係
肝臓の大まかな機能がわかったところで、肝臓は美容とどのように関係しているのかについて、解説していきます。
くすみ・しみ
まず、肝臓への負担が大きくなると、顔色が悪くなります。
肝臓の解毒作用が弱まることにより、血液中の有害物質が解毒されず身体の中をめぐりことにより、くすみや肌荒れが起こります。
血液中に有害物質が混ざることにより、血色が悪くなり、くすみが出てきます。
また肝臓の機能が低下すると、食べ物の栄養素が身体に行き届かないため、肌に必要なビタミンやミネラル、タンパク質が不足し、肌荒れも引き起こしやすくなります。
肝臓が健康であれば、メラニンの活性化を防ぐ『グルタチオン』という成分が合成されますが、機能が低下するとグルタチオンの生成が抑制され、黒色メラニンが増えます。
グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸を肝臓で合成してできる肝臓酵素です。
肝機能低下によるグルタチオンの減少により、シミ・くすみの原因となってしまいます。
加えて肝機能が衰えると肌の代謝も衰えるため、メラニン色素が上手く排出されず、シミやくすみの原因となります。
肝臓の働きが低下すると、透明感のある美肌になれないのです。
抜け毛・薄毛
肝機能が低下すると、薄毛や抜け毛の原因になるといわれています。
1つは肝機能の低下により、食事から吸収したタンパク質の吸収率が下がるためです。
髪の毛を生成するのはタンパク質であり、健康な髪の生成にはタンパク質がかかせません。
ヒトの身体の細胞にはタンパク質が欠かせませんが、それは髪の毛も同じであり、不足すると髪の毛を構成することができず、抜け毛や薄毛の原因となってしまいます。
また最近育毛効果として注目されている成分に『IGF₋1』という成分があります。
IGF-1にはタンパク質によって血糖値を下げる作用の他、血管の拡張や新陳代謝を活性化させる働きがあります。
この作用が髪の毛を生やす毛母細胞に作用すると、髪の毛の成長を促し、育毛効果が期待できます。
IGF-1は肝臓で分泌される成分であり、肝機能が低下すると髪の毛の発育に影響を及ぼし、抜け毛や薄毛の原因となってしまいます。
代謝の低下
「ダイエットするなら筋肉をつけて代謝を上げよう」というのは良く聞く話ですが、筋肉の基礎代謝量は全体の18~22%です。
一方、肝臓の基礎代謝は21~27%を占めるといわれており、筋肉以上に働いている内臓であるということがわかります。
さらに肝臓・腎臓の働きがアップすると、基礎代謝は30%もアップするといわれているのです。
そのため、肝臓もダイエットのカギを握っているといえます。
暴飲暴食が多い、疲れやすい、むくみがひどいなどという人は、肝臓が弱っていてダイエット効果を十分に発揮できていないかもしれません。
肝臓は身体の解毒作用や栄養の合成をおこなっています。
肝機能が弱まると、体の中の老廃物や脂肪を上手く代謝することができず、栄養素が体の中で利用されるように合成しにくくなります。
せっかく栄養素を摂っているのに、余分なものが溜まって使えていないという状態になってしまいます。
肝臓が弱っていると代謝の低下を招き、身体も肌も髪もボロボロになっているという可能性が高いのです。
まとめ
今回は、肝臓がどのように美容に働くのかということについて解説しました。
肝臓は500以上もの機能があり、ダイエットや美肌に重要な代謝や老廃物の解毒に大きく関わっているため、肝臓の健康は美容にも大きく関係しています。
しかし肝臓は丈夫であるがゆえに「沈黙の臓器」ともよばれ、病院にかからなければならないほどダメージが加わっていなければ、血液検査で調べても気が付かない場合もあります。
次回は、自分の肝臓が健康に働いてくれているかチェックする方法や、肝臓の働きをアップさせる方法について詳しく解説していきます。