2020年1月末、新型コロナウイルスが中国・武漢で発見され1年が過ぎました。
2020年が始まったころには、世の中が自粛ムードになり、新型コロナウイルスの影響もここまで長引くと予想できていた人もいないのではないでしょうか。
まさに2020年は激動の一年であり、2021年3月の現在もその影響は続いています。
テレワークやおうち時間が増え、人と会う機会が減った現在、日本人の美容に対する意識はどのように変わったのでしょうか。
また、美容業界にどのような変化があったのでしょうか。
人々の美容に対する意識の変化
コロナ禍において、テレワーク、人に会わない時間が増えていることかと思います。
そんな中、人々の美意識はどのように変わったのでしょうか。
スキンケアに力を入れる傾向に
今まで毎日ベースメイクをしていた人たちが外出自粛が続き、ベースメイクをしない人たちも増え、メイクよりもスキンケアに関心が高まっている傾向にあります。
ベースメイクをしないことにより自分の素肌を見る機会が増えたこと、時間のある今のうちに肌の調子を整えようと『おうち美容』に対する意識の高まりがうかがえます。
また、コロナ禍において、肌の変化を感じた人も多くいるようです。
おうち時間が増えたため、冷暖房に一日中さらされる機会が増えたことによる乾燥が気になる人が増えているようです。
また、人と会わなくなったために無表情でいる機会が増え、表情筋の衰えやシワ、たるみ、むくみが気になるという人も増えているようです。
さらには常にマスクをつけることが求められているため、マスク着用による肌荒れ、吹き出物やかぶれに悩んでいる人も増えています。
マスクによる肌荒れも、メイクよりもスキンケアに力を入れるようになった要因とも言えます。
また今まで月に一回だった自宅でのスペシャルケアに関して、週に1回に増えたという人が多数に上りました。
スペシャルケアをおこなう理由として、今までは「イベント前の対策として」「人と会う前のケアとして」だったものが「アンチエイジングの一環として」「乾燥対策として」という人が増えてきています。
また手指消毒がどこにいっても当たり前に求められるようになり、手洗いやアルコールによる乾燥を気にする人が増えている模様です。
ハンドクリームの売り上げが大きく伸ばしています。
某大手化粧品口コミサイトでは、今年はハンドクリームの口コミが3倍になったそうです。
『おうち美容』にかける時間が増加
緊急事態宣言の発令に伴い外出自粛ムードが続く中、自宅で過ごす時間が増えました。
エステサロンやジムが休業になり、セルフケアに切り替える人も多くなりました。
エステサロンで使用していた美容液をエルフケアで使うようになった人や、美容家のYou Tubeを見て自分なりに研究する美意識の高い人も多かったです。
ジムやフィットネスに関してはオンラインレッスンに切り替えボディラインが崩れないように気を使っている人もいます。
エクササイズやセルフケアだけでなく、食生活に気をつかう人も増えました。
また家族と一緒に住む女性にとってお風呂の時間が唯一ひとりでゆっくり過ごせる時間となりました。
その日の気分によって入浴剤を変えたり、マッサージをしながら湯船にゆっくり浸かるなど、バスタイムが心身のバランスを整える大切な時間となった人も多いようです。
またおうち時間が増えたことにより、これまでになく高級美容器具が売れています。
数万円もするような美顔器やセルフ脱毛器のニーズも増えています。
メイクアップにおける変化
メイクに関しては、アイメイクが濃くなった人が多いようです。
マスク着用により目元が強調されるようになったこと、また『ウエブ映え』という言葉が10代・20代女性を中心に浸透してきているためといえます。
その反面、マスクで口元を隠していることが増えたため、リップメイクをしなくなった人が多いようです。
メイクをするにあたって、“マスク着用” を前提としてメイクをする人が多いため、メイクアップに関しては『落ちないファンデーション・口紅』が求められることが多くなっています。
購入方法にも変化が……
以前は新しい化粧品を使うときは百貨店などで実際に試供品をもらって試してみたり、ハンドデモなどにより実際に自分の肌で試していた人たちが、外出自粛の影響によりインターネットによるオンラインでの購入に切り替わった人も多くいるようです。
その際にネットの口コミを参考にしていたという意見がある反面、新しい化粧品を試すことに抵抗があるという人も多くいます。
今まで使っていた化粧品を使う場合、店頭で買うよりもオンラインショップで買った方が安く買えるという意見もありました。
オンラインで使ったことのない化粧品を購入するにあたり、消費者が一番気にかけているのが『自分の想定した使用感であるかどうか』ということといえます。
色や肌馴染み、使用感など実際に試すことが購入プロセス上に強く位置づけられている化粧品などの場合、この懸念は大きな課題となるといえます。
また信用できるサイトか、企業かということも消費者にとっては非常に重視されます。
『初回ワンコイン』『初回限定お試し価格』と大きく謳っている広告商品が実はお試し価格は3か月定期購入が絶対条件で、途中解約ができなかったというケースもあるようです。
運営会社は信頼できる会社なのか、購入した商品は正規品であり、きちんと届けられるかどうかというのも消費者は懸念しています。
そしてスキンケア商品やコスメの新しい販売方法として『ライブコマース』という販売方法が人気になってきました。
ライブコマースとはSNSのライブ配信アプリなどを使った新しい販売方法です。
配信者はライブで喋りながら商品を紹介していきます。
視聴者は配信者も見ることのできるチャット機能で質問することも可能です。
同時に多数の人とコミュニケーションを取ることができ、どこからでも双方に質疑応答や意見交換ができるライブコマースは新型コロナウイルスが流行る前からありましたが、今回のコロナによって爆発的に成長しました。
中国ではすでにライブコマースが急成長しており、日本もますます需要が高まってくると予測されています。
大手化粧品会社もライブコマースを取り入れるところも増えてきました。
一般企業が行うライブコマースや、インフルエンサーが自身のライブ配信でPRすることもあります。
またインフルエンサーブランドも流行しています。
美容系You Tuberなどが自身のブランドを立ち上げるケースが増加しています。
インフルエンサーブランドはインパクトはあるけど商品に期待できないというケースが従来では多かったです。
しかし今は本当にいいものを扱うインフルエンサーブランドが多く、ロングセラー商品となっていることも多いです。
流行りを追いかける時代から自分に合ったものを選ぶ時代へ
流行りをただ追いかけるという時代が変わりつつあります。
『パーソナルカラー診断』や『骨格診断』など、自分に合ったものを取り入れたいとう人が増えています。
コロナ禍における美容業界
美容室の90%が3年以内に廃業するという、生き残りがそもそも難しい美容業界。
そんな中、新型コロナウイルスの影響は美容業界にどのような影響をもたらしているのでしょうか。
ここからは働く側の人たちやコロナ禍における美容業界について記述していきます。
美容室の現状
美容室の数は年々増え続けるのに、美容師の数は年々減り続けています。
また人口の減少、少子高齢社会にともない、美容業界はますます厳しくなっていくことが予想されます。
美容師の初任給は200万円代が一般的で、スタイリストになれたとしても300万円代であり、日本人の平均年収400万円代までなかなか届きません。
美容師の働き方としては様々な働き方があり、初任給も昔に比べれば良くなっていますが、未だにブラックといえます。
この数年で美容師の働く環境がよくなるとも言えません。
そして新型コロナウイルスの影響により悪くなる一方であるといえます。
フリーランスの美容師として、SNSの発信やブログなど、自分で集客のできる美容師さんが増えています。
しかしフリーランスの美容師たちにとって何の保証もないため、自分で何とかしなければなりません。
今まで高単価で売り出していた実力のある美容師さんたちへの打撃も大きいです。
今まで高単価で施術してもらっていたお客さんたちの懐がさみしくなれば、低単価の美容室に流れていくことが十分に考えられます。
経済状況に合わせて単価を安くすれば自分の首を絞めることになります。
しかしお客さんが来なければ収入はゼロ。
すべてのお客様が来なくなるわけではありませんが、危機感を持って働くことが必要です。
相次ぐキャンセル、今後どうなるかわからない不安、都市封鎖による経済的損失、仕事中における感染リスク……
どれも不安要素であり、上げればキリがありません。
エステサロンの現状
一番利用者が減ったのはエステサロンのフェイシャルエステです。
日本エステティック機構では2020年10月初旬、エステサロン内の感染防止の徹底を図ることを目的に、全日本福祉協議会の協力を得て、主にエステティシャンを対象に新型コロナウイルスの抗体検査を斡旋を実施することとなりました。
エステ業界はお客さんと至近距離でサービスをおこなう為、感染対策をおこなっても新型コロナウイルス感染の懸念があるからです。
感染の有無がわかれば安心してサロンを利用することができます。
検査は日本エステテック機構の付属医療機関で実施し、最終的にアメリカの認証機関の認証を受けた検査機関で判定されるため、制度の高い検査といえます。
緊急事態宣言の利用制限の対象にもエステテックサロンは含まれておらず、大手のエステティックサロンは感染症対策を万全に行ったうえで営業を続けています。
百貨店や商業施設に入っているエステサロンはその施設の営業時間に合わせて営業しています。
また脱毛などの場合は個室での施術がほとんどなのでクラスターが発生する確率も低いとされています。
一方で、まつげエクステやまつげパーマなど、マスクを着けている時間が長いため、アイメイクに力を入れる女性が増えたため、アイラッシュサロンの利用頻度が増えているようです。
美容整形の現状
新型コロナウイルスの影響で集客が激減している美容業界ですが、美容整形業界においてはものすごく人気が殺到しているようです。
テレワークになり会社の人と会わなくなった、人と会わないので整形したことがバレない、マスクを常につけているので施術箇所が隠せる、ダウンタイムを気にしないで済むというのが人気の理由です。
施術は個室で健康管理がされている医師、看護師としか接さない事、消毒や備品の取り換えなど、感染症対策を万全におこなっているのも施術者が増えている理由の一つです。
コロナ禍で特に人気のある施術が脂肪吸引だそうです。
脂肪吸引のダウンタイムは約2週間であり、場所によっては固定器具を付けたり、運動制限をさせられることもあります。
そのため人と会わなくていい緊急事態宣言中に脂肪吸引をする人が増えているのだそうです。
新型コロナウイルスの影響により経営が悪化した美容業界への対処方法
新型コロナウイルスの影響により、業績が悪化した美容業界は多くあります。
美容師が独立し、店舗を構える際、ほとんどの人が『日本政策金融公庫』から借り入れをします。
この日本政策金融公庫が現在新型コロナウイルスの影響により経営が悪化した美容業界に、融資枠を特別に設けています。
通常であれば担保や信用がなければ借りることはできませんが、融資後3年間は0.9%の引き下げがあり、実質無担保・無利子で融資を受けることができます。
今後も経営していくつもりであれば、経営がままならなくなる前に相談することをオススメします。
対象は新型コロナウイルスの影響により経営が悪化した事業者のみが対象になります。
対象になる事業者は
●ここ最近1カ月の売り上げが前年、または前々年の同時期に比べて5%以上減少している
●独立して一年未満の場合、直近一カ月を含む過去三カ月の売り上げが、令和元年12月の売り上げ又は令和元年10~12月の平均売上よりも5%以上減少している
という場合です。
創業して3カ月未満の場合は対象になりません。
新型コロナウイルスに関する相談窓口(国民生活事業)|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
このほかにも経済産業省が新型コロナウイルス感染症に係る融資制度について、中小企業対策を講じています。
新型コロナウイルス感染症に係る中小企業者対策を講じます(セーフティネット保証4号の指定) (METI/経済産業省)
まとめ
さまざまな生活様式の変化を求められた新型コロナウイルス。
美容業界において、
消費者サイドでは
●ベースメイクやメイクアップよりもスキンケアに力を入れる人が増えた●口紅の売り上げが下がり、アイメイクが濃くなる傾向●企業やインフルエンサーなどによる「ライブコマース」という双方型の新しい販売方法が今後も増えてくることが見込まれる
などの変化がありました。
美容業界全体の傾向としては
●エステサロンは緊急事態宣言の自粛対象にはなっていない●外出自粛やテレワークの普及により、美容整形をする人が急増した
●新型コロナウイルスの影響により業績が悪化した中小企業に対して、日本政策金融公庫からの融資や経済産業省の融資制度を利用できる場合がある
という変化がありました。
まだまだ新型コロナウイルスの影響は美容業界にさらなる変化をもたらすことが予測されます。