「カリスマ美容師になれば月収100万円も夢じゃない!」
十年以上前に出てきた『カリスマ美容師』という言葉が流行った当初、憧れの職業だった美容師というお仕事。
現在でも美容師は中高生のなりたい職業第13位に入る人気の職業です。
しかし、実際には美容専門学校に入った半分の人は美容師にならない、専門学校を卒業しない、というほど現実は厳しいようです。
美容師の仕事は一般的にブラックといわれることが多いですが、実際にはどうなのでしょうか。
今回は美容師として働く1日、美容師として働くメリット・デメリット、美容師の将来性について検証していきます。
美容師の一日
美容師として働くメリット・デメリットについて述べる前に、美容師として働くにあたり美容師になるとどんな一日を過ごすのか、調査しました。
スタイリストの一日
9:00~ 出勤
出勤したら開店準備、朝礼から一日が始まります。
前日に干しておいたタオルを片づけたり、店の清掃をします。
開店時間の約1時間~30分前に出勤することが多いです。
また育児中のスタイリストが多い美容室などではこの時間にレッスンや講習をしてい るところもあります。
10:00~ 営業開始
開店と同時に予約のお客様がご来店されます。
カット・カラー・パーマなど、お客様のオーダーに合わせて施術していきます。
それぞれのメニューの所要時間はカットで一時間弱、カットとカラーで2時間、カットとパーマで2時間(デジタルパーマ、ストレートや縮毛矯正の場合は3時間ほど)、トリートメントやヘッドスパを入れるとプラスで10~30分ほどかかります。
カット専門店になるとカットだけで一人当たり15分で終わることもあります。
スタイリストとアシスタントがペアになっている場合、一日の接客人数は10人前後です。
アシスタントが複数人つく場合は接客人数はもっと増えます。
カット専門店の場合であれば接客人数は倍になります。
お昼休憩は予約状況に合わせて各自で設定している場合も多いですが、予約の立て込む週末、お盆、年末年始などの繁忙期にはお昼休憩だけでなく、水分を取る暇もないことも多くあります。
大手チェーン店になるとしっかり1時間休憩を取ることができるサロンもありようです。
また予約の入っていない空き時間があればSNSの更新などの集客活動も美容師の大切な仕事の一つです。
DMの作成やキャンペーンを考えたりもします。
20:00~ 閉店準備
夕方くらいから徐々に片づけを開始していきます。
タオルやカラー材のカップなどを洗ったり、トイレの清掃をしたりします。
閉店してからフロアの清掃、レジ締め、ミーティングなどをします。
閉店後は即帰宅とならないことが多く、アシスタントの教育、指導の時間にしているサロンが多くあります。
23:00 帰宅
最近では働くママ美容師のためにブランクがあってもOK、3~5時間などのパートタイマーのような働き方も珍しくありません。
アシスタントの一日
先述のように、スタイリストの一日がとてもハードなことはわかりましたが、スタイリストになる前のアシスタント時代はさらにハードです。
8:00~ 出勤・自主練習
スタイリストよりも早く出勤し、ウイッグを使った練習や、アシスタントメンバー同士でシャンプーの練習を一緒にします。
自信のついたところで先輩スタイリストにお願いして練習台になってもらうことが多くあります。
9:00~ 開店準備・朝礼
清掃など、先輩よりも率先しておこなわなければなりません。
美容師の世界は想像以上に縦社会です。
その日の予約状況を把握し、自分の動きを確認します。
10:00~ 営業開始
スタイリストのアシスタントをします。
先輩スタッフのやり方を見て勉強し、自分の練習にもいかせるようにします。
お客様と積極的に会話をし、コミュニケーションを図ります。
忙しければスタイリスト同様、お昼ごはんを食べる暇がないことあります。
空いている時間があれば練習や片づけ、清掃をおこないます。
最近は労働基準の観点から営業時間中の空き時間に練習をおこなうところも増えています。
このような美容室では、空いた時間を見つけてウィッグを使ったカットやパーマの練習をおこないます。
片づけや清掃もアシスタントの大事な仕事です。
いつでもきれいなサロンに保つために目を配る必要があります。
20:00~ 閉店準備・練習
片付け、清掃を率先して行い、先輩からのフィードバックやミーティング、次の日の準備をします。
営業後はスタイリストについてもらって練習をします。
カットモデルにサロンに来てもらいカットやパーマ、カラーリングをすることもあります。
カットモデル探しはアシスタント時代に探すことのできない仕事の一つです。
スタイリストになったときに自分の顧客になってもらえる可能性もあるため、カットモデルをたくさん探しておく必要があります。
23:00 帰宅
先述のスケジュールは比較的大きな都市でのタイムスケジュールであり、田舎の方に行くほどオープン時間が早まり、閉店時間も早まるところが多いようです。
美容師のメリット
一日のスケジュールを見てもアシスタント時代はもちろん、スタイリストになってからもハードな一日をこなしていることがわかります。
では毎日ハードな美容師という職業ですが、美容師として働くことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
国家資格であるため身体が動く限り一生働き続けることができる
美容師になるには美容専門学校を卒業して、国家資格である美容師免許を取得する必要があります。
美容師免許は一度取ってしまえば一生使える資格であり、身体が動く限り働くことができます。
またカットやスタイリングなどは美容師でなければできない仕事です。
自分のスキルでお客様に喜んでもらうことができる
美容師はカットやパーマなどの技術を駆使して、お客様の望むヘアスタイルにしていきます。
そこには自分だからできるクリエイティブな要素もたくさん含まれています。
お客様の理想のヘアスタイルをヒアリングし理解しようとすること、そしてそれをお客様が想像していてた以上のものが出来上がり、喜んでもらえたとき、とてもやりがいを感じる仕事だと、美容師さんは声を揃えて言います。
しっかりと技術さえ身に付けていれば再就職しやすい
ブランクがある美容師を雇ってくれるのかと心配になる方もいるかもしれませんが、実はある調査によると、50%の美容院がブランクのある美容師を採用しているそうです。
一度美容師から離れてしまっても、20~40代であれば再就職のハードルは低いようです。
子育て中であれば、育児に理解のある女性オーナーのお店であったり、同じように育児中の先輩のいるサロンであれば悩みも相談しやすいです。
美容業界は現在人手不足のため、即戦力になる人材を求めています。
ブランクがあっても基礎技術がある人を雇いたいと思っているサロンは多く存在します。
そのためにもアシスタント時代に気を抜かずしっかりと技術を身に付ける必要があります。
技術があれば高収入を得ることができる
美容師として人気が出てくれば、独立して値段を自由に決め、高収入を得るというのも美容師ならではのメリットです。
今は個人事業主として働くこともできる時代であり、美容師だけでなく美容師兼セミナー講師、美容師兼ユーチューバーなど、さまざまな方法で収入を得ることができます。
以前に紹介した『福祉美容師』という訪問美容ができる資格を取れば老人ホームなどの施設に出向いてカットなどもできます。
また管理美容師の資格を持っていれば美容室を開業、経営することも可能です。
服装やおしゃれをある程度自由に楽しむことができる
美容師になるメリットとして、比較的服装や髪形などが自由なところが多いのもメリットの一つです。
一般的なスーツを着るサラリーマンにはできない髪形などを楽しむことができるのも美容師ならではです。
またカラーやカットは自分の働く店舗で練習がてら無料でやってもらえるというのも、美容師ならではのメリットです。
美容師をしていないと出会えない人に出会える
人と接する仕事なので、美容師をやってたからこそ出会えた人がいるのも美容師をするメリットといえます。
お客様の相談に乗ったり、逆に相談に乗ってもらえたり、さまざまな人に会うことにより、人間としての経験や人生を豊かにすることができます。
美容師のデメリット
美容師になるにあたり、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
給料が安い
カリスマ美容師ともなれば年収1000万円を超える人も珍しくありませんが、多くの場合スタイリストになれたとしても月給25~35万円程度、アシスタント時代は16~20万円程度と、お給料が少ないのが特徴です。
個人事業主として完全歩合で働き、稼げるようになればそれなりのお給料になりますが、そこまでになるには長い道のりが必要です。
スタイリストになるまでに約2~3年ほどかかり、一人前のスタイリストにまでなろうと思うと更に下積みが長いです。
今は昔に比べ下積み期間は短くなっていますが、現役のスタイリストでさえ一人前になって本当に自信が持てるようになるまでたくさんの時間が必要です。
練習にたくさん時間を費やし、カットモデルを探してと地道な努力が必要です。
また保険関係の手続きも基本的に個人でやることが多いです。
基本的には国民年金、国民健康保険です。
美容室の社員になれば社会保険や厚生年金に入れるところもありますが、その代わりにお給料がかなり安くなります。
そのため実際には個人事業主として働く人が多いです。
常に立ち仕事で激務のため、腰痛などの体調不良を起こしやすい
美容師の仕事は基本的に立ち仕事です。
同じ格好で何時間も過ごさなければならない事もあり、そのため腰を痛めてしまったり体調を崩すことが多くあります。
個人事業主として美容師をしている場合、身体を壊して仕事を休めばもちろんお給料はありません。
またまれにシャンプーのし過ぎや薬剤かぶれによる手荒れなど、肌トラブルにより美容師を続けられないという人も少なからずいます。
拘束時間が長い
アシスタント時代には朝6時に家を出て、練習し、夜も営業後に練習をしてから帰宅するということがざらにあります。
今ではかなり8時間労働のところも増えたようですが、帰宅が深夜12時過ぎて帰宅というのも少し前まで当たり前でした。
しかし未だにお昼休憩に1時間取れるというサロンはなかなかありません。
忙しいときはお昼休憩もなく営業が終わるのも当たり前です。
お昼ご飯を食べれたとしても、施術と施術の合間5分で済ませならければならないということが日常茶飯事です。
また自分で率先して腕を磨かなければ給料は上がらず、労働時間とは別に自分で練習しなければならず、自由な時間はほとんどありません。
美容師の将来性
アシスタント時代はお給料も安いし、スタイリストになってからもハードワークを強いられる美容師ですが、お客様に感謝されてお給料がもらえるというやりがいもあります。
そんな美容師のほとんどの人が目指すゴールは ”独立” です。
アシスタントの下積みから始まり、毎日遅くまで練習して技術を磨いた努力の結果として自分の店を持ちたいと思う美容師は多いものです。
しかしながら美容師という職業自体の人気が高まり、美容師の数が増加しているうえ多くの人が独立するという夢を持っていることからも、実際に独立できる人は多くありません。
実際に美容室の数は年々増えてきており、美容師同士の競合や安売り店との価格競争が激しくなり、やりがいはあっても独立という目標に向けたイメージを描けず、将来に不安を抱える人は多いのは事実です。
さらに美容師の仕事は拘束時間も長く、体力勝負になるので年齢を重ねるごとに将来への不安が増す人も大勢います。
給料や福利厚生の悪さに美容師の離職率が高まっているのも事実です。
社会的地位と他の業種への転職の難しさ、将来的な不安から20代のうちに転職を考えやりがいはあっても異業種へ転職する人も多いです。
美容師の仕事は楽しそうで華やかなイメージとは裏腹に大変な仕事であり、ブラックだと美容師本人が言っていることも多い職業です。
その分やりがいも大きく、手に付けた職なので一生ものですが、長年美容師業界が抱える給与や拘束時間の問題が未だ解決に至っていないのが現状です。
そんな中大変な環境でも本当に頑張り投セル精神力があるか、やりがいや目的を持ち続けれるか、これから美容師になることを考えている人は、美容師を目指すうえでしっかりと考える必要があります。
美容師として働くという事
美容師としての一日や、メリット・デメリットについてでした。
ここまででわかるように、華やかに見える世界ですがその裏にはたくさんの努力や苦労があります。
美容師として生きていくにあたり、最も大切なことは「美容師という仕事が好き」という気持ちです。
人と接する仕事が好き、人に喜んでもらえるのが好き、人から感謝されるのが好き、後輩の成長を見るのが好き……そのように思えるは美容師に向いているといえます。
お給料は安いし、労働時間は長いし、身体は壊すし、美容師はまたの名を『感情労働』とも呼ばれており、毎日毎日接客するので心身ともに疲れてしまう人も多いものです。
しかし「自分の力でお客様をキレイにすることができた」という感情だったり、「お客様に笑顔でありがとうといわれた」と言われたことによりそれまでの苦労や辛さが吹っ飛ぶようです。
美容師を続けている人たちは口を揃えて
「この仕事は好きじゃないと続けられない」
と口を揃えて言います。