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『福祉×美容』高齢社会で求められる美容業界生き残り方

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日本の高齢化率は2017年の時点で27.7%であり、高齢化が進んでいます。

一方出生率は下がっており、少子高齢社会の日本。

これは今まで若いお客様をメインに顧客にしていた美容師やネイリストにとっても大きな問題です。

そんな少子高齢社会が進む日本において、高齢者に対する美容系サービスが取り入れられるようになりました。

今まで若い人を中心に施していたネイルやアロマセラピーなど高齢者にも対応できるようにという取り組みが行われています。

実際に美容サービスへの出資額は年齢とともに比例して上昇しており、70代女性の割合が実は最も多いのです。

70代の女性の人口は全体の22,2%、2763万人です。

これほど多くの人たちが美容へ関心を寄せているのだとしたら、高齢者向けのネイルやエステなどの美容サービスは大きなチャンスを秘めているということがわかります。

美容業界の利用者が高年齢化することにより『福祉』×『美容』の知識を持つ人が求められます。

そして福祉と美容を組み合わせた資格も増えています。

今回は美容が高齢者にどのような影響を与えどのように高齢社会に取り入れられるのか、また今後どのような資格や知識が求められるのかを見ていきます。

高齢社会における美容の役割

年齢を重ねるにつれ、ヒトの外見は変化していきます。

高齢になるにつれて、美容から遠ざかってしまうのは仕方のないことかもしれません。

しかし若い人と同じように高齢者にとっても美容を楽しむことは生活の質、QOL(Quarity of Life)の維持向上に効果があることが研究によりわかっています。

化粧やネイルなどを施すことには見た目をキレイにするだけでなく、気持ちを明るくするなど精神的にも良い影響を与えます。

この効果を活用したものが化粧療法であり、近年美容業界において注目を集めています。

美容による身体効果は化粧をする細かな動作により、加齢によって低下する身体機能の維持、回復することも可能です。

化粧療法は高齢者自身が身体面において効果があり、リラックス効果や精神的健康維持のために、自ら化粧をする方が効果があるといわれています。

高齢者にとって長期的な化粧療法の効果として、自信や幸福感が高まり、鬱感情や不安感情が軽減されることがわかっています。

また化粧をすることにより周りの人たちから「キレイだね」と評価されることが自信に繋がり、積極的に外出しようという気持ちになります。

その結果周囲の人との関りが活発になり、心の健康も保たれ良い循環が生まれます。

福祉美容とは

福祉美容とは主に美容師さんなどのヘアスタイル業界を指すことはことは多いですが、そのほかにもメイクやネイル、エステなど幅広くあります。

また福祉美容は女性だけのためのものではなく、男性にとってもハンドマッサージや鼻毛や眉毛の手入れなど、本当に幅が広いです。

さらに癌患者向けの医療用ウイッグ、障碍者自立支援のための身だしなみやマナー指導なども福祉美容に含まれます。

日本だけに限らず、海外の発展途上国に行き、サロンやマッサージの技術など福祉美容はさまざまなニーズがあります。

高齢社会において美容業界に求められること

高齢社会において、美容業界にはどのようなことが求められるのでしょうか。

シニア向サービスの向上

以前は高齢者に対する美容といえばカットや白髪染めなどが主体でありサービスは簡易的なものでしたが、高齢者の増加にともない、求められるサービス技術のスキルも高くなってきています。

また美容業界において若者だけをターゲットにするのではなく、高齢者向けのサービスを充実させることは、店舗の厳しい生存競争の生き残りの方法の一つともなり得ます。

実際に美容室の数はコンビニよりも多く、年々美容室の数は増えるのに、半分は3年以内に潰れていきます。

いかに高齢者のニーズに合った美容サービスを提供できるか、も重要な美容業界における生き残り戦略となり得ます。

高齢者の多くが『薄毛』『しみ・シワ・たるみ』『白髪』に悩みを抱えています。

これは高齢者に対してターゲットにしやすい悩みであるといえます。

エステや美容室など、それぞれのサロンにどのようなサービスが求められるのでしょうか。

美容室に求められること

薄毛、白髪は男女ともに共通の悩みであり、加齢とともに現れるシミ・シワ・たるみは多くの方は30代後半から気にし始める悩みです。

ボリュームを出すためにパーマをあてる、パーマ剤と相性の良いシャンプーなどのヘアケア商品をオススメするなど、高齢者向けのサービスを付け加えるなどの工夫で高齢者でも通いやすいサロン作りをする必要があります。

また髪や頭皮に栄養を与え、ハリやコシを取り戻す美容液をおすすめするというのも一つの方法です。

髪の毛を太くする美容液を店頭で販売し、自宅ケアとして使ってもらうと店販の売り上げアップにつながります。

高齢者の中には正しいケアを知らない方も多くいるので、自宅ケアの方法を教えてあげるのもいいかもしれません。

また白髪に関しては比較的若い場合、黒色に戻せることもあります。

ストレスが原因で白髪が増えてしまった場合、ヘッドスパや頭皮マッサージなどでの改善もあり得るので、効果の出やすいマッサージの提案をすることもできます。

白髪染めをする方に対しては髪の毛が細く、パサパサにならないようにトリートメントをセットにすると喜ばれます。

白髪染は定期的に通わなかればならないので髪や頭皮への刺激を和らげる酵素を使っているサロンもあります。

長く通ってもらうために工夫が必要です。

エステサロンや美容外科・皮膚科に求められること

しみ・シワ・たるみは高齢者のお肌の3大悩みです。

エステサロンに行くのは比較的若い子が多いですが、フェイシャルケアに関しては年齢を重ねた方にも人気です。

特に首のシワは年齢が感じられるということで気にされている方が多いです。

最近は顔だけでなく、首にも照射できるハイフや美容マシンもあります。

普段からできるケアの方法を提案したり、サプリメントを店舗で販売するのも一つの戦略です。

年齢を重ねるにつれ、『美容』よりも『健康』を意識し始める傾向にあります。

エステやサロンであれば漢方を取り入れたり、健康食品を扱ったりするところもあります。

サロンを中心に健康面から美をサポートしていけるものを充実させると高齢者の方でも足を運びやすくなります。

ネイルサロンに求められること

加齢とともにシミやしわが目立つようになる皮膚に対して、爪はほとんど老化しません。

しかし乾燥によって割れやすくなることがしばしばあり、やすりを使って形を整え、ローションやクリームを使って指や手とともに保湿します。

出張で老人福祉施設でネイルケアをおこなう場合、ネイルケアやハンドマッサージなどのケアが中心となります。

出張の場合軽くマニキュアを塗る程度であることが多いです。

ジェルネイルはオフするのに負担がかかることが多く、代わりにシールを用いる福祉ネイリストもいます。

高齢者には体力や抵抗力が落ちている場合があり、使い捨ての道具をつかったり念入りな消毒をおこなったりと衛生面には十分に気を配る必要があります。

このような爪のケアを施す効果はもちろん、高齢者がネイリストと向き合って話しながらケアを受けることにより、スキンシップやコミュニケーションとなり気持ちが明るくなることに繋がります。

出張美容

出張美容とは高齢社会が進む中、外出することが困難になった高齢者や介護が必要な方、障害を抱えていたり妊娠中で外出が難しい方、退院から間もない方の自宅や病院、施設に訪問し、施術をおこないます。

これらは出張美容、または訪問美容などと呼ばれています。

出張美容は介護福祉に関する知識を持った福祉美容師が自宅や介護施設等を訪問し、ヘアカットなどの施術をおこないます。

このような出張美容をおこなえる美容師を福祉美容師といいます。

ちょうど10年前の東日本大震災の際には多くの福祉美容師が現地に出向き活躍したそうです。

福祉美容師は訪問美容により、一般的な美容師以上に現地の多様なニーズに応えることができます。

サロンのバリアフリー化

店舗前の階段にスロープを付ける、車いすでも利用できるトイレを設置するなど、バリアフリーなサロン作りを始めるサロンもちらほら出てきました。

なかにはサロン周辺であれば無料送迎するサロンも出てきました。

実はサロンとお客様の自宅を行き来する車両を導入することで国から助成金を得ることができます。

普通車両から専用車両にするだけでも対象になります。

高齢者をターゲットにするなら店舗のバリアフリー化は必須です。

これから美容業界はますます高齢者をターゲットにすることが生き残りに係わってきます。

これが当たり前になってからでは遅いので、今始めればそれがほかの競合サロンとの差別化になります。

また福祉に力を入れるサロンの場合、国から助成金が出るケースがあります。

介護美容と福祉美容

福祉美容とよく似た言葉で言葉で『介護美容』という言葉があります。

介護美容の仕事内容も福祉美容とほとんど同じですが、利用者さんが要介護者となります。

そのため介護の知識が必要になります。

介護美容師として働くには美容師免許はもちろん『介護職員初任者研修』『介護職員実務者研修』を取得することが望ましいです。

介護関係の資格がなくても美容師免許さえあれば介護美容師の名前を名乗ることができますが、車いすの介助や心のケアなども求められるので、介護関係の資格は取得することをオススメします。

地域によっては介護関係の資格がないと介護美容師として活動できない場合もあるようです。

さらに上を目指したい場合は介護福祉士やホームヘルパーの資格を取得し、実際の立場で役立てることもできます。

福祉美容の業界で活かせる資格

高齢者の方の美容に携わることは、今後の美容業界において可能性を秘めています。

そこで福祉美容に関する資格はどのようなものがあるのでしょうか。

認定福祉美容介護士

介護状態や障害を持った方へ理美容施術が施せる専門知識・技術を修得できる資格です。

理・美容師を持っていることが必須で、福祉介護の基礎や医学・薬学の知識も身に付けることができます。

訪問介護や施設での活躍も期待できます。

美容師・理容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能な人も取れるので卒業前に認定福祉美容介護士を専門学校を卒業する前に取ることもできます。

資格取得方法は協会指定期間における通信教育課程の修了成績とスクーリングの出席率による審査により取得することができます。

出題範囲は『病院環境衛生学』から看護助手論、看護マナーなど、『医科薬科学』から生化学基礎、解剖生理学基礎など、実技知識として訪問理美容サービス提供についてや実技緒論などが出題範囲です。

またベッドメイキングや一時救命処置についての実技などもスクーリングで学習します。

資格認定審査料は10800円です。

美容師・理容師資格:認定福祉理容・美容介護師(R)|医療福祉情報実務能力協会

福祉理美容師

福祉理美容師は理美容師の経験・知識・技能に加え、高齢者の方や身体の不自由な方などへの正しい介助知識を身につけたスペシャリストです。

理容師・美容師が介護福祉の基本知識を身につけることにより、高齢社会を担う検定資格です。

受験資格は美容師・理容師免許を持っている人が受験できます。

厚生労働省指定の美容師・理容師教育機関を卒業した人、理・美容師試験受験履修単位取得見込み証明ができる人も受験可能です。

福祉理美容師の資格を取りには2日間の実技講習と自宅学習が必要です。

講習内容は訪問美容について、福祉・介護・医療等についての基礎知識、訪問美容の準備と道具の取り扱い・施術時の注意事項、高齢者とのコミュニケーションや消毒・感染症などについて学びます。

出題範囲は美容師法・理容師法、訪問先の範囲、社会背景と介護保険、認知症について、個人情報の守秘義務や車いすの扱い方、ベッドシャンプーについて学びます。

検定料は25000円です。

日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)

福祉ネイリスト

一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会が発行する資格です。

一般的にプロの資格のあるネイリストがとる資格ですが、未経験でも取ることが可能です。

3時間の講習を7日間受講し、試験に合格する必要があります。

講習では主に高齢者や障碍者施設での訪問施術、自宅への訪問施術、レクリエーションの指導などをおこないます。

年に1度更新料として3000円支払う必要があります。

JHWN − 一般社団法人 日本保健福祉ネイリスト協会 

まとめ

2021年4月に施行された介護保険法改正は、高齢者が住み慣れた町で安心して暮らすことができるように医療・介護などのサービスを提供する『地域包括ケアシステム』の実現を目指しています。

高齢者向けの潜在的な美容市場規模は統計学上の訪問理美容だけでも784.2億円に上ります。

エステやリラクゼーション、ネイルを合わせるとその規模はさらに大きくなることがわかります。

高齢社会において美容業界は高齢者に受け入れられるよう、サービスやメニューの改善、バリアフリー化、訪問美容の充実が今後の課題といえそうです。

これからは若い人たちだけでなく、いかに高齢者に支持されるかが競争の激しい美容業界の生き残りをかけるポイントとなりえます。

福祉×美容はこれからますます需要が高まるため、今のうちに福祉理美容師や福祉ネイリストの資格を取っておくことをオススメします。

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