看護師といっても働く場所はたくさんあります。
内科、外科、整形外科、心療内科などなど…。そんな中でも皮膚科はプライベートを大切にしたい看護師のあいだで人気の勤務先です。
皮膚科では看護師はどんな仕事をしているのか、皮膚科で働くことにどんなメリットがあるのかについて解説します。
看護師の国家資格をいかしつつ自分の時間も大切にしたいとお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
皮膚科の仕事内容
皮膚科の仕事内容について紹介します。皮膚科でもその他の勤務先でも同じ仕事もたくさんありますが、皮膚科ならではの心遣いも求められます。
自分は皮膚科の仕事に向いているのか、皮膚科に就職、転職するにあたってどんな点に気を付けなければならないのかを考えてみましょう。
事前の問診をおこなう
皮膚科の看護師が始めにおこなうのは患者さんの問診です。
医師が診察する前に簡単に患者さんの症状や来院した理由を問診し、ある程度情報を整理します。問診をおこなうことで医師の仕事を軽減する他、治療方法を的確に導きやすくなります。
看護師が患者さんの症状から診察をするわけではありませんが、問診の際はより詳しい情報をきちんと聞き出す必要があります。
その症状はいつから出ているのか、何をしてから発症したのか、どれくらいひどい症状が出ているのかを簡潔にまとめます。
患者さんが「これが原因だ」と思っていることや「症状がひどくなっている気がする」という主観は時として間違っている可能性もあります。主観ではなくあくまで客観的に症状を把握しなければなりません。
こちらから具体的な質問をすることで患者さんも自分の症状についてきちんと考えるきっかけになり、曖昧だった悩みも明確なものになるかもしれません。
患者さんによっては口にしにくい場所に症状が出ていることもありますので、そのような場合は配慮のある言葉選びも大切です。
カルテの管理
カルテの管理も看護師の仕事です。
皮膚科だけでなく他の勤務先でもカルテの管理は看護師の仕事の一つであることが多いので、経験者であればスムーズに作業をおこなえるでしょう。
クリニックによっては紙のカルテではなく電子カルテに記入することもあります。
情報を共有しやすく、誤字なども少ないためより正確に情報を管理できます。電子カルテは媒体によって操作方法が違うこともありますので、慣れるまできちんと操作を覚えましょう。
医師に受診内容を明確に伝える
問診をおこなった内容を医師にきちんと伝えるのも看護師の仕事です。
どんな症状が出ているのかだけでなく、患者さんはその症状をどうしたいと思っているのかを伝える必要もあります。
皮膚疾患には軽度のものから重度のものまでさまざまですが、皮膚科の医師によっては「悪性のものでなければ処置しない」という考え方の医師もいます。ですが患者さんは「良性のものでも完全に治療してほしい」と思っているかもしれません。
医師に言われてしまうとそのまま言い返せず診察を終えてしまう患者さんもいますので、看護師が間に立ってきちんと患者さんの意思を伝えなければなりません。
診療中の医師のサポート
医師の診療がよりスムーズになるようにサポートします。
施術や手術に必要なものを揃える、薬の説明のための資料や患者さんに渡すパンフレットを準備するなどです。
医師が患者さんの体を診察しやすいように患者さんをサポートしたり、指示する仕事もあります。
実際の診療の際に患者さんが自分の意思を伝えきれていない、または医師が患者さんの意図を誤解していると感じたら事前の問診をもとにきちんと言い換える、言葉の足りない部分を補うといった配慮も必要です。
患者さんへの処置
実際の処置を看護師がおこなう場合もあります。簡単なものであれば、医師の診察の後に看護師が処置を担当します。
症状が出ている部分に軟膏などの薬品を塗布する、傷ができている場合は消毒、ガーゼや包帯での保護をおこないます。
治療後に軟膏や飲み薬の処方薬が出る場合は、自宅でのケア方法についても看護師がきちんと説明します。
どのような症状が出たら使用を中止すべきなのか、どれくらい症状が緩和されたら使用を中止してもいいのかなどもわかりやすくきちんと伝えましょう。
治療のための機械の作業
ほくろの除去や水虫の治療などに専用の機械を使う治療もあります。
操作方法をきちんと覚えるのはもちろんですが、医師の指示通りに的確に機械による治療をおこなっていきます。
治療方法として看護師が当然だと思っているものでも、いきなり患部に機械を当てられることに恐怖心を抱く患者さんも少なくありません。
どのような機械なのか、どのような治療なのか、どれくらいで終わるのかなどを説明し、患者さんの不安な気持ちを和らげることも看護師の大切な仕事です。
患者さんへの配慮
皮膚の疾患は体のさまざまな場所にあり、中には男性の医師に見せるのに抵抗がある女性の患者さんもいたり、そうでなくても服を脱ぐことに羞恥心を感じる患者さんもいたりします。
ですがきちんと診察しなければ適切な治療はおこなえませんので、看護師はその旨を患者さんに説明します。
さらに着替える場所に誘導したり、必要最低限の部位しか見えないように毛布などで患者さんの体を覆ってあげる、メンタル面のフォローをするなどの配慮をしなければなりません。
勇気を出して受診に来た患者さんが適切な治療を受けられるように最大限のフォローをしましょう。
患者さんへのアフターフォロー
問診、診察、治療が終わったら最後に軟膏や飲み薬などの説明を看護師がおこないます。
皮膚の疾患は病院での治療だけでなく自宅で本人や家族が適切に対処することでスピーディーに改善するものが多いです。
わかりやすく説明するとともに、患者さんの「いつまでこんな症状が続くのだろう」という不安を拭い去ってあげなければなりません。
患者さんの中には、高圧的な医師の言葉をきちんと理解できず、また質問もできないままに診察が終わってしまったと感じる方もいます。患者さんが理解できていないことはないか確認し、不安な点がある場合は再度丁寧に説明してください。
また、服を脱がなければならない、コンプレックスを人に見せなければならないという羞恥心を感じている患者さんに対してねぎらいの言葉をかけてあげることで緊張感やストレスを払拭することができます。
皮膚科に訪れる患者さんの症状のほとんどは生命に関わるようなものではありませんが、その分メンタル面のサポートも大切になってきます。
皮膚科で働くメリット
皮膚科での仕事は、プライベートもしっかり守りたい看護師にとくに人気があります。
どのような理由で皮膚科が支持されているのか、皮膚科ではたらくことでどんなメリットがあるのかについて解説します。
夜勤がない
その皮膚科の経営形態にもよりますが、外来やクリニックの皮膚科の場合、診療時間は決まっており入院する患者さんもいません。
総合病院や大学病院などの大きな病院の中に皮膚科があるケースもありますが、その場合でも皮膚疾患が原因で緊急手術をすることや患者さんを入院させることはほとんどありません。
そのため皮膚科では夜勤の必要がなく、診療時間とその後の処理が終わればスムーズに帰宅できます。
朝番、夜番などのシフトを設けているクリニックもありますがそれでも夜遅くまで働かなければならないというケースは少なく、生活リズムを乱すことなく健康的に働き続けることができます。
プライベートを大切にできる
皮膚科の仕事は夜勤がほとんどないのが嬉しいポイントの一つです。
さらに残業や休日出勤もほとんどなく、プライベートな時間を充実させられます。
単身者はもちろん、家庭がある方にとってはこの条件は非常に大きなメリットといえるでしょう。
家事や育児をしながらでも働きやすく、長く看護師として働き続けたいという方にも皮膚科はおすすめです。
経験が少なくても働ける
皮膚科での処置は軟膏の塗布や消毒、ガーゼや包帯による処置など、看護師としての基本的なスキルがあればおこないやすいものばかりです。
中には非常に高度な技術を求められる手術や治療もありますが、難しい治療を看護師がおこなわなければならないケースは非常に少ないです。
そのため経験が少なくても皮膚科なら働きやすいというメリットがあります。
どうしても苦手なことがあるものの看護師として働き続けたいという場合に皮膚科を選ぶ看護師もいます。
一方で、看護師としてのスキルを向上させられない、新しいことや難しいことを学ぶ機会が少ないというのはデメリットと言えます。今後どのような看護師になりたいのかを考えて、皮膚科で働くべきかどうか判断しましょう。
プランクがあっても復職しやすい
皮膚科の仕事は看護師としての基本的なスキルがあればできることが多く、入ってくる新しい治療方法も少なく、他の勤務先と比較すると覚えることは少ないです。
そのためプランクがあっても復職しやすく、とくに結婚や出産で一時的に現場を離れてしまった看護師に人気があります。
先ほども紹介した通り皮膚科は残業や夜勤がほとんどなく、家庭と仕事を両立させやすいのも選ばれる理由の一つです。
今後結婚や出産で看護師として働けなくなってしまうかもしれないとお悩みの方は、最初から復職しやすい皮膚科の仕事を選ぶのもおすすめです。
精神的な負担が少ない
皮膚科の症状は、患者さんにとってはストレスになるものも多いですが、それが原因で体調が急変する、急死につながるというものはゼロに近いです。
症状の急変による臨機応変な対応は看護師としての力量が試されるだけでなく常に緊張感がともない、大きなストレスにつながります。
また、担当していた患者さんが亡くなることで精神的に大きな傷を抱えてしまう看護師もいます。
皮膚科では患者さんの急変、急死がほとんどなく、その分看護師が抱えるストレスも大幅に軽減できます。
精神的な負担をできるだけ感じずに働き続けたいという方にも皮膚科は人気の勤務先といえます。
美容皮膚科とはどう違う?
一般的な皮膚科でも美容皮膚科でも看護師の求人はたくさんあります。
一般的な皮膚科と美容皮膚科ではどのような違いがあるのか、また看護師の仕事にはどのような違いがあるのかを確認しておきましょう。
皮膚科は皮膚疾患を治療する
一般的な皮膚科はニキビやじんましんといった症状が出ているものを治療する場所です。
症状によって治療方法はいくつかあるものの、度合いや患者さんの目的に応じてだいたい決まっており、処置をしやすいのが特徴です。
疾患が治っていく過程もわかりやすく、患者さんにとっても医師や看護師にとっても成果がわかりやすいです。
患者さんの年齢も小さな子どもから高齢者まで幅広く、それぞれに適した対応、治療を考えるのも看護師の仕事の一つです。
美容皮膚科はよりきれいになる治療をする
一方で美容皮膚科は、肌に特別な問題がなくてもエイジングケアや美白、脱毛などの目的で来院される患者さんがほとんどです。
軟膏、投薬、点滴、レーザー、外科的手術など施術方法もさまざまありますが、医師から提案するのではなく患者さんが豊富な選択肢の中から自分で選ぶことが多いです。
医師や看護師はあくまでその選択肢のアドバイスをしたり、どの施術がいいか迷っている患者さんにおすすめの施術方法を的確に紹介したりします。
ニキビや肌荒れの治療は一般的な皮膚科でも可能ですが、治るまでの経過が緩やかです。それに対して美容皮膚科での治療ではレーザーなどで比較的スピーディーに治療ができます。
一般的な皮膚科では症状に対する治療しかできませんが、美容皮膚科の場合患者さんが求めるのであれば症状の治療だけでなくシミ予防や美肌点滴などのプラスの治療をおこなうこともできます。
小さな子どもが来院することは少なく、若い女性やエイジングケアを気にされる方がほとんどです。
また、一般的な皮膚科では保険適応内の治療がほとんどなのに対して美容皮膚科で保険が適応されるケースは少ないです。
接客スキルが求められる
美容皮膚科の診療には保険が適応されません。そのためクリニックによっては治療費が高額になります。
その分患者さんはしっかりとした成果を期待しています。肌荒れの改善などの一般的な皮膚科で治療できるものから、レーザー治療など美容皮膚科でしか対応できない治療をしてほしいと思って来院される方も多く、不安を抱えています。その分高度な施術はもちろん丁寧な接客も求められます。
中には一流のホテルのような接客を研修の段階で教え込まれるクリニックもあります。
美容皮膚科に来院される方を「患者さん」ではなく「お客様」と考えているクリニックは多く、その分丁寧な対応をしなければなりません。
自身の美しさを保たなければならない
美容皮膚科で働く医師や看護師、受付などのスタッフには美しさを求められます。
「このクリニックになら任せられる」と患者さんに思ってもらえるように、肌や髪のケアはもちろん、体型管理やメイクの指導も厳しいクリニックは多いです。
クリニックの信頼度、説得力を上げるためにもある程度見た目に気を使うことはマストだと思っておきましょう。
中にはそのクリニックでおこなっている治療と特別価格で受けられたり、看護師同士の練習として治療をおこなうこともあります。
給料は一般的な皮膚科より高め
美容皮膚科の看護師の給料は一般的な皮膚科の看護師の給料よりも高額です。
一般的な皮膚科よりも専門的で高度な知識や経験が必要であり、接客など本来の仕事以外のサービスもしなければならないためです。
また、治療費が自己負担で高額なためクリニックの収益が高く、その分看護師などのスタッフにも還元されやすいです。
一般的な皮膚科と同様に夜勤や残業が少ない美容皮膚科がほとんどですが、入院を伴う美容整形手術をおこなうクリニックであれば夜勤がある可能性も。その分夜勤手当てが出るので、より高い収入を得やすいのも美容皮膚科の特徴です。
皮膚科で働く看護師になろう!
皮膚科での看護師の仕事について解説しました。
皮膚科は夜勤が少なく、精神的負担も少ないため、ストレスを低減してプライベートも充実させたい、看護師の資格はいかしたいという方におすすめの勤務先です。
その分条件のいい皮膚科の求人はすぐに満員になってしまう、面接段階で落とされてしまう可能性も高いです。
皮膚科で働きたいのであれば志望動機やアピールポイントなどもきちんと考えて面接対策をおこないましょう。
総合病院の皮膚科、個人経営のクリニック、さらに美容皮膚科など選択肢も多いですので、自分の働きたい条件に合う皮膚科を探してみてください。