ここ数年でよく聞かれるようになった「フェムテック」という言葉は、かつては国内外のベンチャー企業が中心となっていた市場ですが、女性の社会進出が進むとともに国や大手企業も注目する成長分野となっています。
2025年には5兆円規模にまで拡大されるといわれており、今後もさらに注目が集まることが予想されます。
しかしフェムテックについてよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
今回はフェムテックとは何なのか、どのような製品があるのか、フェムテックの現状と今後について解説していきます。
美容業界で働く女性には特に知っておいてほしいことばかりなので、ぜひここでフェムテックについて知っておいてください。
フェムテックとは?
フェムテック(FemTech)とは「女性(Female)」と「技術(Technology)」を組み合わせて作られた造語であり、テクノロジーの力により女性特有の健康問題を解決する分野のことです。
月経・不妊・妊娠・出産など、今まで日が当たりにくく、大きな声で話題にすることをタブーとされてきた女性ホルモンに関する内容が多く取り上げられます。
具体的な製品やサービスとしては
◎月経周期の予測アプリ
◎家庭用排卵日検査キッド
◎不妊症対策
◎妊産婦のサポート
◎セクシャルヘルス
◎骨盤ヘルスケア
◎遠隔治療などによる女性の臨床ヘルスケア
など、多くのフェムテックが登場しています。
テクノロジーの発達・女性の社会進出・起業家の増加などが後押しとなり、以前はベンチャー企業が多く参入していた市場ですが、最近では政府も補助金を拠出する可能性が高くなり、今後もフェムテック市場は発展すると考えられています。
「フェムテック」は2013年ごろ、ドイツの生理管理アプリ『クルー(Clue)』の代表であるイダ・ティン氏によって作られた言葉であり、欧米を中心に急速に広まっていった言葉です。
日本では2018年ごろから知られるようになり、国内メーカーが生理用吸水ショーツを作ったことにより注目が集まりました。
女性特有の健康問題は骨粗鬆症や甲状腺疾患など多岐にわたりますが、日本のフェムテック市場は現状で月経、不妊、妊娠、出産といった女性ホルモンに関することが代表的な存在となっています。
特に月経に関する社会の注目度が高くなっています。
新型コロナウイルスの影響により困窮状態にある女性を支援するため、東京都豊島区をはじめ足立区、北区、荒川区などの地域で生理用品の無料配布も増えています。
フェムテックが拡大した理由
女性特有の病気や身体の悩みはデリケートな問題であり、フェムテックという言葉が一般的になるまで公共の場での話題としてタブー視される風潮がありました。
しかし近年、フェムテックの市場が急激に広がっているのにはいくつか理由があります。
1つ目の理由は、技術の発展です。
テクノロジーの発達によりアプリ開発やセンサー技術の応用により女性の体調に関する情報の記録・データ化が可能になり、生理管理アプリなどが登場しました。
テクノロジーの発展により、女性の不調をサポートする希望ができたことがフェムテック市場の拡大に繋がりました。
2つ目の理由は女性の社会進出です。
大手企業で女性が重要なポジションを担うようになったり、自ら起業する女性が増え、社会で女性たちは目覚ましい活躍を見せています。
そうした中、女性が女性のためにサービスを開発し提供することが増えたため、フェムテック市場が活性化した一つの要因ともいえます。
またSNSの発展により、女性たちが今まで人に打ち明けづらかった性の悩み、セクハラや性的被害を訴えたMeToo運動などにより、女性たちが活躍する社会に世界が変わりつつあります。
アフリカ・中東・アジアなどの地域で『FGM(女性器切除)』の文化が根強く残る中、2020年にスーダンで禁止になりました。
2018年、サウジアラビアでは女性の自動車運転が解禁になり、同年男尊女卑社会であるパキスタンで女性による権利平等を求めるデモが初めて行われ発展途上国でも女性たちの権利が主張されています。
また発展途上国に限らず先進国でも、2021年1月にポーランドで人工中絶が禁止されることに対する抗議デモが起きています。
女性の力が世界全体でこのような広がりをみせていることも、フェムテック市場に大きな影響を与えているといえます。
フェムテックによって解決を期待される課題
フェムテックによって、女性のどのような悩みを解決できるようになるのでしょうか。
一つ目の課題は、月経の悩みです。
生理によって引き起こされる身体の不調・不快感を解決するフェムテックとして、月経周期予測アプリ、快適さを追求した月経カップや吸水ショーツなどが登場しています。
二つ目の課題は妊娠・出産に関する課題です。
妊活・妊娠期間の体調管理ができるアプリ、母乳育児に役立つ搾乳機などのアイテムが登場してきています。
また年齢を重ねた女性が向かえる更年期や閉経など「メノテック」と呼ばれる新しいカテゴリーも登場しており、更年期オンライン相談サービスや骨盤底筋を鍛えるアイテムなども登場しています。
また乳がんなどの女性がかかりやすい病気に向き合うフェムテックとして、乳がん患者向けのブラなどがあります。
さらにセクシャルウエルネスとして、女性にとって健全な性生活も大切な課題であり、性的健康のや快楽のためのケアの提案する商品も登場しています。
代表的なフェムテック事例
様々な商品やサービスの登場しているフェムテック市場ですが、メジャーなものではどのようなものがあるのでしょうか。
生理予測アプリ
生理予測アプリといえば、CMでもお馴染みの「ルナルナ」があります。
ルナルナは2000年にサービスを開始し、2021年現在では累計1700万ダウンロードされている人気の生理管理アプリです。
現在では、排卵日や生理日の予測や女性に合わせた健康管理、化粧品メーカーとのコラボにより美容アドバイスなどのコンテンツもあります。
フェムテック特化型ECサイト
世界初、フェムテックオンラインストアとして「Fermata Store」が登場しました。
月経、妊娠、産後ケア、セクシャルウエルネスなどの製品が揃っています。
2020年には東京乃木坂に路面店をオープンさせています。
女性向けプロテイン
女性に不足しがちな栄養素を取り入れた「KOREDAKE」は、2020年に通販を開始しました。
口コミをきっかけにたちまち話題となり、同年10月には売り上げを100倍にし、インスタグラムなどのSNSの発信より注目の集まる商品となっています。
今後のフェムテックに求められるもの
急激な成長を遂げ注目の集まるフェムテック市場ですが、今後のフェムテック市場にはどのようなことが求められるのでしょうか。
様々な世代の女性の細かいニーズに応える
月経・妊娠出産・更年期・セクシャルウエルネスなどの既存のサービスや製品にとらわれず、健康、ストレス、生活習慣、シニア世代向けサービスなど、より多方面からのニーズに応えることのできるフェムテックが求められると予測されます。
また女性のデリケートな健康問題について、細かなニーズに応えるフェムテックサービスも求められると予測されます。
人の身体が一人ひとり違うように、身体に関する悩みも人によって様々です。
細かなニーズに対応するのであれば、大企業よりも試行錯誤を初期段階で融通を利かせれるベンチャー企業などの方が参入しやすい場合があります。
デジタル世代の若者をターゲットにする
現時点でのフェムテックのターゲットは出産や子育て、更年期など症状に悩む20~40代の女性ですが、女性特有の身体の悩みは生理の始まる10代から始まっている場合が多くあります。
また10年前に比べて性に関する話題がよりオープンに取り上げられるようになり、今後はフェムテックのニーズがより若年層に広がっていくと予想されます。
また若年層の女性は生まれた時からスマホ、パソコンを使用しているデジタル世代であるため、SNSなどの発信による製品の注目度を高めることができると期待されています。
時代に合わせた製品づくり
時代の移り変わりが早い現代は、女性のライフスタイルも急激に変化しています。
そのためフェムテック事業に求められるのは、時代に合わせた商品・製品の開発です。
その時代に合わせて新しいアイデアを取り入れたり、時代の流れとともに求められるものを提供できるよう方向転換していくことができれば、より女性のニーズに合ったものを提供することが可能になります。
まとめ
ここ数年で注目を大きく集めているフェムテックは女性+テクノロジーを融合させた新たな市場です。
今後ますますジェンダレス文化の浸透や女性の社会進出により、需要が高まると予想されます。