一時は流行語ともなった「マイナスイオン」という言葉ですが、マイナスイオンと聞くと、何となく美容や健康、ストレス軽減など癒しに効果がありそうなイメージを持っている人も多いことかと思います。
その一方で、インターネットで「マイナスイオン」と検索すると、「マイナスイオン 効果なし」などと検索上位に上がってくることもあり、本当にマイナスイオンは美容や健康に効果があるのかということを疑問に持つ人も少なくありません。
一部の科学者たちの間では、まだまだ十分に解明が進んでおらず、検証不足と科学的盲点から「偽物の化学」と説いている人がいるのも事実です。
今回はマイナスイオンについて、そもそもマイナスイオンとはなんなのか、本当に美容に効果があるのか、どうしてマイナスイオンには効果がないといわれるようになったのか、マイナスイオンの信憑性について解説していきます。
マイナスイオンとは?
科学的にマイナスイオンの効果について立証されていないというのは、そもそも科学用語にマイナスイオンという言葉が存在しない事も大きな要因の一つです。
日本人が「マイナスイオン」と呼んでいるものの正式な化学的名称は「ネガティブ・エアー・イオン(陰イオン)」なのです。
「マイナスイオン」という言葉は日本でしか通じない造語であり、造語ができた課程も「
ネガティブ」という言葉を使うとイメージが悪いから、という商品を販売するうえでの家電メーカーの戦略によるものだったからです。
実際に「噴水や滝壺の周辺にはマイナスイオンがたくさん発生しているから癒される」というのは、マイナスイオンという言葉を使っている以外は、実際に研究が行われた科学的事実であり「レナード効果」といわれています。
では「マイナスイオン」という言葉の元になっているといわれる陰イオンとは、どのようなものなのでしょうか。
陰イオンとは?
物質にはこれ以上分けることのできない単位として「原子」があります。
原子には陽子と中性子でできた電子核と、その周りを周回する電子で1つの原子が成り立っています。
原子核の陽子と電子の数が一致して周回していれば電気的に安定した中性の原子となり、数が違えばエネルギッシュな不安定な原子となり、これが「イオン」です。
例えば「水素」の原子は、一つの陽子の周りに一つの電子が周回しています。
水素は一つの陽子に対して一つの電子がまわっており、陽子と電子の数が同じだからこそ安定した強い結合で繋がっており、なかなか壊れません。
この安定した陽子と電子を無理やり壊したとき、世界を破壊するほどの大きなエネルギーを生み、これが「水素爆弾」とよばれるものになるのです。
水素から電子が奪われると、原子核の陽子がエネルギッシュになるため「陽イオン」と呼ばれており、電子を受け取ると原子にマイナスの電荷が発生し「陰イオン」となります。
陰イオンとは、電子の数が多くなった原子イオンの状態をいいます。
一般的に「マイナスイオン」とはこの「陰イオン」を表現しているといわれています。
陰イオン(マイナスイオン)のメリット
ここからは理解しやすいように、陰イオンのことを「マイナスイオン」、陽イオンのことを「プラスイオン」として解説していきます。
マイナスイオンは美容や健康に効果的であるといわれていますが、現代社会において排気ガス、紫外線、電化製品から発せられる電磁波、農薬や添加物、ダイオキシンなどによってプラスイオンが発生しやすい状態になっているといわれています。
プラスイオンが増えると頭痛やめまい、ストレスなどの症状が出る場合があります。
またこのプラスイオンには血液循環を悪くするため、肌の老化が早まるといわれています。
反対にマイナスイオンには血液を浄化し、弱アルカリ性にする働き、新陳代謝や筋肉の働きを活性化させる、自律神経の調節を促す効果や、抵抗力・免疫力をアップさせる効果があるといわれています。
実際に「マイナスイオンには美容・健康に効果がない」といわれた家電メーカーが、実際に美容効果などを実際にデータ化しています。
某大手メーカーのイオンを放出することにより除菌効果の期待できる空気清浄機では、マイナスイオンとプラスイオンの化学反応によって発生する化学反応が、ウイルスの活性を妨害するという実証をおこないました。
メーカーだけではなく多くの医師や科学者たちによって、マイナスイオンには人体への効果があるという論文も多く発表されており、鎮静効果、血糖値や血圧・脈拍の増減、血液酵素であるアミラーゼの増強、炎症緩和や機能回復の促進など、反対派を上回る多くのエビデンスを立証しています。
またクリニックでも代替医療として保険適用はできないものの、マイナスイオンによる治療法を行なっているところもあります。
医療いおいても花粉症やぜんそくの改善、火傷などによるの痛みの減少などが認められています。
ではなぜマイナスイオンには、科学的根拠がないといわれてしまうようになってしまったのでしょうか。
その原因はとあるテレビ番組にありました。
「マイナスイオンに効果はない」といわれるようになったきっかけ
前述の通り、マイナスイオン反対派を超えるだけの医学的・科学的根拠が明らかになってきている中、マイナスイオンブームの崩壊となったきっかけは、マイナスイオンブームを作った人気番組による度重なる捏造です。
マイナスイオンの医療への利用自体は古くから海外で取り入れるものもあった中で、マイナスイオンという言葉が広まったのは10年以上続いた人気番組「発掘!あるある大辞典」がマイナスイオンについて特集したためです。
この番組がマイナスイオンについて取り上げられて以降、店頭にはマイナスイオン効果を謳う商品が並びましたが、マイナスイオンのみならず、根拠や各省のない内容を多く放送してしまい、最終的に数々の捏造疑惑により番組自体がなくなってしまいました。
また2003年には、科学的根拠がないといった批判により製品の表示法の改正がおこなわれ、多くのマイナスイオン関連の製品が販売中止となりました。
さらに国民生活センターによって、マイナスイオンを謳っている商品すべてに健康や美容効果が立証されているわけではないということが発表されると、マイナスイオン商品において業者への資料や景品表示指導をおこなうという事態に発展し、マイナスイオンブームは去っていきました。
根拠のない情報を放送していた番組により、マイナスイオンには科学的根拠がないというイメージが先行してしまい、マイナスイオンには美容・健康における効果はないといった情報が多くあるのです。
まだまだマイナスイオン(陰イオン・ネガティブエアーイオン)に対して科学的にわかっていないことも多いのは事実ですが、しっかりと立証されたエビデンスがあるのも事実です。
まとめ
今回はマイナスイオンの正体と、科学的に根拠がないといわれる原因について解説していきました。
「マイナスイオン」という科学的な学術用語がないというのは事実であり、日本人が『マイナスイオン』と呼んでいるものの正体は、正しくは「ネガティブ・エアー・イオン」、または「陰イオン」と呼ばれているものであり、まだまだ確立されてないエビデンスがあるものの、陰イオンは健康や美容に効果があると立証されているものがあるのも事実です。
次回はその中でも科学的に実証されている美容・健康効果について解説していきます。