経口避妊薬として知られる『ピル』ですが、効果は避妊効果だけではなくホルモンバランスを整えるため、様々な服効果があります。
「ピルを飲むと太る」「ピルの飲み始めは調子が悪くなる」という人もいますが、自分に合ったピルを選ぶことが大切です。
そもそもピルにはどのような成分が含まれているのでしょうか。
今回はピルについて詳しく解説していきます。
経口避妊薬「ピル」とは?
ピルとは女性ホルモンを含む飲み薬であり、ホルモンの含有量や種類によって主に3つのタイプがあります。
『低用量ピル』『緊急避妊薬(アフターピル)』『生理日変更ピル』の3種類です。
一般的にピルと呼ばれているのは『低用量ピル』のことです。
ピルには卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類の女性ホルモンが含まれており、ピルを飲むと血中の黄体ホルモンが増えます。
黄体ホルモンが増えるのは通常排卵後ですが、すでに排卵後のホルモン状態であると脳が判断し、『卵胞刺激ホルモン』の分泌を抑制し、排卵が起こらない仕組みになっています。
そのためピルを飲むと子宮頸管粘液の性質や子宮内膜を変化させるため、精子が子宮内に侵入するのを防ぎ子宮内膜を薄くし受精卵の着床を抑制することができるため、避妊効果があります。
ピルによる避妊効果は99%以上といわれ、コンドームが85%の避妊力があるのに比べて、正しく飲めばかなり高い確率で避妊効果があります。
ピルには避妊効果だけでなく、生理痛の緩和、生理過多、生理不順や生理前症候群(PMS)、子宮内膜症の治療や子宮関連のがん予防やニキビにも効果があるといわれています。
現在経口避妊薬としてピルは世界中で使用されており、含まれるホルモンの量が少ない低用量ピルです。
日本では1999年から使用されていますが、市販薬ではないため医師の処方箋が必要です。
最近ではネットでも購入可能になりましたが、安すぎるピルは偽物であることもあるので注意が必要です。
ピルの処方は子宮内膜症に伴う月困難症のみに保険が適用となり、それ以外の場合で処方してもらう場合は自費診療になります。
初回は検査などのため1万前後かかることがありますが、ピル自体は1カ月で2000~3000円程度で購入することができます。
ピルの種類
低用量ピルには様々な種類があり、含まれるホルモン量や開発時期によって1~4の世代に分けられています。
また女性ホルモンの配合比率によって1~3相性の3種類があります。
ピルに含まれるホルモン量がずっと同じである「1相性」、黄体ホルモンの量が後半に増える2段階の「2相性」、黄体ホルモン量が3段階で変化していく「3相性」があります。
最初に開発された「シンフェーズ」は生理痛緩和効果が高く、副作用が少ないという特徴があります。
第2世代のピルには「トリキュラー」「ラベフィーユ」があり、トリキュラーは1週間ごとにホルモン量の異なる錠剤を使用し、段階的にホルモンを調整します。
「3相性」といわれ、シンフェーズに比べてエストロゲンの含有量が少なく、副作用が少なく、不正出血が起こりにくいとされています。
トリキュラーのジェネリック医薬品がラベフィーユです。
現在最も使用されているピルが第3世代の低用量ピルであり、21日間同じホルモン量の錠剤を服用する「マーベロン」や「ファボワール」などがあります。
「1相性ピル」といわれ、ホルモンの変動がないためニキビ改善にも効果的といわれています。
マーベロンのジェネリック医薬品がファボワールです。
そして第4世代のピルが『超低用量ピル』といわれ、「ヤーズ」などがあります。
ホルモン変動が少なく、副作用が現れにくいという特徴があります。
24日間エストロゲンとプロゲステロンを含む錠剤を使用し、休薬期間は4日間です。
月経困難症(PMS)の治療にも用いられています。
ピルの種類によっては合う・合わないがあるので、自分のライフスタイルや体調、用途に合ったものを選ぶようにします。
ピルの効果
ピルにはエストロゲンとプロゲステロンが含まれているため、卵胞刺激ホルモンの分泌が抑制されるため、排卵が起こらなくなり避妊することが可能ですが、避妊以外にも様々な効果が期待できます。
ホルモンバランスの安定
女性の生理周期は約28日とほぼ定期的にやってきますが、その調整をしているのがエストロゲンとプロゲステロンです。
この二つのホルモンがバランスを保って分泌されることにより生理周期が決まります。
エストロゲンとプロゲステロンの変動によって女性の身体に負担を起こし、自律神経の乱れを起こします。
女性ホルモンの急激な変化によっておこるのが生理前症候群(PMS)や生理前不快気分障害(PMDD)ですが、肉体的にも精神的にも不安定になり、イライラしたり不安定な精神状態になりやすくなります。
低用量ピルを飲むことにより女性ホルモンの変動が少なくなるため、ホルモンの量が安定し、PMSなどホルモンバランスの乱れによる症状を緩和します。
またピルを正しく服用することにより、一定の周期で規則正しく生理が来るようになり生理をコントロールできるようになるため、生理不順の改善や生理周期の安定に繋がります。
子宮内膜を薄くする
低用量ピルには、生理痛を軽くする効果もあります。
生理痛や生理時の出血は子宮内膜の厚みが関係して起こる症状であり、ピルには子宮内膜の増殖を抑制する効果があります。
生理痛は子宮内膜が排出される際の子宮収縮によっておこり、子宮内膜が薄いほど子宮収縮は弱くなります。
ピルによって子宮内膜が薄くなることにより、生理痛の軽減や子宮内膜症の症状を緩和し、出血量を減らすことができるため過多月経の治療にも用いられます。
そのため生理時の貧血の緩和にも効果があります。
女性に起こる病気の予防
子宮体癌は、卵胞ホルモンが過剰に分泌され黄体ホルモンが少なくなったときに発生しやすくなるガンですが、ピルを服用することにより一定の黄体ホルモンを保つことができるため発生率を減らすことができます。
また排卵を抑える効果により、卵巣癌にもかかりにくくなります。
卵巣の表面は排卵のたびに破れて傷がつきがんの原因となりますが、ピルを服用すると排卵がなくなるため、卵巣癌にかかりにくくなるのです。
その他にも卵巣嚢腫、乳腺症などの予防、ニキビなどの肌荒れ改善効果も期待できます。
低用量ピルの服用方法
低用量ピルは1日一回飲む内服薬です。
飲むタイミングに決まりはないため、自身の時間の取れるタイミングでかまいませんが、体内のホルモン量を一定に保つため毎日同じ時間に服用する必要があります。
また避妊目的で使用する場合、飲み忘れると効果が半減してしまうので注意が必要です。
低用量ピルは生理周期ごとに1つのシートを使い切る形で服用します。
生理が始まった日から飲み始め、毎日順番に服用していきます。
ピルの種類によって1枚のシートが21錠のものと28錠のものがあり、基本的な飲み方はどちらも同じです。
まとめ
コンドームや子宮内リングに比べて圧倒的に避妊力を持つピルですが、避妊以外にも生理痛の緩和や女性ホルモンバランスの安定、ニキビなどによる肌荒れの改善が期待できます。
WHOでは若い世代の避妊薬として使用を勧めていますが、日本におけるピルの浸透率はまだまだ低く、高校生から飲み始めることができますが、飲んだことのない人も多いのが現状です。
しかしピルには副作用もあるため、ピル使用には医師と相談しながら決めることをオススメします。
次回はピルの副作用やいまさら聞けないよくある質問について解説していきます。