最近では、老若男女問わず人気のある『アートメイク』施術。
ここ数日に渡り、美容bizではアートメイクやアートメイクアーティストについて詳しく解説してきました。
素顔の自分に自信が持ちたい、メイクの時短にしたいと人気の施術となっていますが、『メディカルアートメイク』という施術をご存じでしょうか。
病気や抗がん剤の治療により脱毛したまつ毛や髪の毛があるように見せたり、乳がん手術後の患者の乳首の再建手段などとして、病後やけがのケアに活用されているアートメイクです。
アートメイクは美容の分野だけでなく、医療の現場でも治療の一環として活用されています。
今回は、メディカルアートメイクについて詳しく解説します。
メディカルアートメイクとは
メディカルアートメイクとは、アートメイクの施術によって病気や手術などにより外見にコンプレックスを感じる患者さんに自信を回復させ、人生のクオリティオブライフの向上を目的とした施術です。
先天的な皮膚疾患や、予期せぬ事故・病気により健常な容姿を失った皮膚に色素を入れ、再建します。
アートメイクの技術を用いて傷跡や無毛症、白斑症、乳頭の色素欠落、口唇口蓋裂などをカモフラージュすることができます。
メディカルアートメイクという呼び名以外にも、『パラメディカルアートメイク』『医療アートメイク』と呼ばれることもあります。
今でこそ一般的な施術となっているアートメイクですが、実は日本での抗がん剤治療後の乳房再建ケアとして、アートメイクがかなり前からおこなわれてきました。
病後のケアとして施すアイラインやアイブロウも、ここ10~15年の間に普及してきています。
20年前の医療現場であれば、まずは病気の治療を優先する風潮があり、外見は後回しにされていました。
しかし現在は病気の治療と共に、患者のクオリティオブライフ(QOL)が重視されており、医師や患者さんの周りの方々の理解度も上がり、外見のケアに関する気配りが増えています。
これらの時代背景もあり、メディカルアートメイクを受ける患者さんは増加傾向にあります。
美容目的でも病後のケアでも、施術内容に変わりはありませんが、病後ケアを目的の場合には病状についてヒアリングを行います。
今後の手術の予定、抗がん剤のクール、主治医の許可、その日の体調などを、丁寧に聞いていきます。
メディカルアートメイクを施す看護師は、一般のお客様以上に心に寄り添う配慮が求められます。
毎日のメイクがしやすくなったり、自分の顔や身体に違和感がなくなったと喜ばれる患者様が多くいます。
メディカルアートメイクのデザインの仕方
メディカルアートメイクは、事故や病気の後の肌に色素を入れ、本来の患者さんの姿に再建するのが目的ですが、一般のアートメイクとは違いがあるのでしょうか。
ここではアイブロウ・アイライン・乳房について解説していきます。
アイブロー
一般的なアートメイクではその人の普段のメイクやトレンド、顔の黄金比によってデザインを決めていきますが、メディカルアートメイクではウイッグを被るか・被らないか、髪の毛の有無によってデザインを変えていきます。
ウイッグを被っている場合は地毛と同じくらいの濃さ・太さでデザインしますが、髪の毛がない状態で眉毛が濃いと違和感があり、その点も考慮してデザインしていきます。
髪の毛がすべて脱毛している場合では薄めの眉毛をデザインし、特にウイッグを被らない男性などは薄めに色を入れます。
また形に関しては過去の写真を参考に仕上げていくこともありますが、過去と現在では輪郭や目の大きさや位置が少しずつ違うため、眉毛の黄金比を説明して直接眉毛を描きながら提案していく場合が多いです。
患者さん本人の顔に直接眉毛を描いた方が、本人のイメージがわき、満足度の高い仕上がりとなります。
アイライン
まつ毛がなくなると、表情が薄く見えがちになってしまいます。
抗がん剤などによる脱毛でまつ毛を亡くした方に喜ばれるのが、アイラインのメディカルアートメイクです。
細くアートメイクを施すことにより、まつ毛が生えているように見えるため、目元にメリハリがつきます。
まつ毛が脱毛していても、アイラインを入れるだけで大きく印象が変わります。
乳輪・乳頭(乳房)
現在では乳房へのインプラントが保険適応になり、乳房を切除した後に乳房再建をおこなう人がかなり増えたと言われています。
乳房再建の場合、乳首の再建を希望する人には、おなかなどの皮膚を採って乳頭を作ることもできます。
しかしこの乳頭には色がないため、乳輪・乳頭の色をメディカルアートメイクによって色を入れていきます。
反対側の乳房が残っていれば、それに似た色で作っています。
現在の塗る麻酔は性能が良くなっているため、痛みをほとんど感じることがないそうです。
一方で眉毛などと違い、乳輪・乳頭へのメディカルアートメイクは、乳房再建の手術をした先生に紹介された場所でおこなうことが一般的です。
メディカルアートメイクのQ&A
ここからは、メディカルアートメイクの疑問点について答えていきます。
Q1:病気の治療中でもメディカルアートメイクは可能?
A:治療に差支えがなければ可能です。
しかし抗ガン剤の治療中であれば施術できないクリニックもあります。
また病状によっては施術できないため、担当医に相談することが大切です。
Q2:治療が始まる前にアートメイクをおこなう人はいる?
A:治療が始まる前にアートメイクをおこなう人もいます。
眉毛やまつ毛のあるうちにアートメイクをおこないたいという人も多くいます。
抗がん剤治療に入る前にアートメイクを行うことにより、脱毛が始まっても顔の印象が変わりづらくなります。
Q3:MRIは受けることができる?
A:メディカルアートを受ける病院や、治療中のクリニックで一度確認する必要があります。
アートメイクで使用される酸化鉄には、MRIに影響を及ぼす可能性があると言われていますが、ここ10年間の日本でおこなわれるアートメイクは酸化鉄の使用量の少ないアートメイクが多いため、問題のない場合は多いです。
一方海外でアートメイクをおこなった場合、医療機関の場所でもアートメイクが行われるため、使用する着色色素にバラつきがあるため注意が必要です。
心配ないとは病院で相談してみてください。
Q4:メディカルアートメイクの良いクリニックの探し方は?
A:信頼できる自分に合ったクリニックを見つけることです。
メディカルアートメイクは審美目的のアートメイクと同様、永久的に色が残るわけではなく1~3年ほどで色素が薄くなります。
そのためきちんとアフターケアをおこなってくれるクリニックを見つけることが大切です。
またメディカルアートメイクといえど、保険が適用されるわけではありません。
全額自己負担となるため、クリニックによって費用が異なり、納得のいく施術やカウンセリングを行ってくれるクリニックを見つけることが大切です。
どのくらい時間が経ったらリタッチが必要か、リタッチも同じクリニックで可能か、リタッチ料金はいくらくらいかかるのかなど、不安のある人は事前のカウンセリングでしっかりと尋ねることをオススメします。
まとめ
今では需要が多く、一般的な施術となってきたアートメイクですが、実は病気やケガによって外見にコンプレックスを感じている人に行われるメディカルアートメイクは、実は10年以上前からおこなわれていました。
最近では治療の一環として、健全な見た目であることは患者さんのQOLを上げることができると、医療現場の方も積極的に関心を持っています。
美容のためのアートメイクの施術であると思われがちですが、抗がん剤による治療のための脱毛や乳がん手術後の再建として医療現場でも大きく役立っています。