ヘアメイクアーティストの仕事は求められる状況に応じて「最高の美」を作る、ヘアセットとメイクを専門に扱うプロフェッショナルです。
雑誌や広告、テレビ、CM、映画、ショー、ブライダルや着付けの現場などでクライアントの状況や要望に合わせてスタイリングやメイクをします。
日本だけにかかわらず、海外で活躍するメイクアップアーティストもテレビなどで取り上げられているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
芸能人と一緒にお仕事ができたり、とっても夢のあるお仕事ですよね!
今回は『ヘアメイクアーティスト』というお仕事についてみていきます。
ヘアメイクアーティストの仕事とは?
ヘアメイクアティストの仕事は雑誌、テレビやCMなどの撮影現場、ファッションショーや舞台などのイベントなどでモデルやタレントにヘアセットとメイクをする仕事というイメージがあるかと思います。
しかしヘアセットやメイクをするのは芸能人だけではありません。
結婚式場や写真スタジオで一般の人にメイクやヘアセットをする大衆に向けた仕事もあります。
主にメイクのみをおこなう『メイクアップアーティスト』に対して、『ヘアメイクアーティスト』はメイクとヘアセットの両方をおこないます。
最近の撮影現場ではヘアセットとメイクを別の人で担当する現場も増えてきていますが、『ヘアメイクアーティスト』としてトータル的にイメージを作り上げるのがヘアメイクアーティストの仕事です。
求められるイメージやクライアントの希望に合わせてヘアセットとメイクを仕上げるため、全体のバランスを崩さないようファッションなどの知識も不可欠です。
ヘアメイクアーティストの仕事で最も大切なのはクライアントが求めているイメージ通りに仕上げることです。
「ブランドイメージに沿ったヘアメイク」
「映画や舞台のクオリティを高めるへアメイク」
「結婚式の一生に一度の特別な日のヘアメイク」
など、テーマやPRする商品をどう見せたいのか、クライアントの目的によって施すヘアメイクが変わってきます。
イメージにあわせてヘアセットとメイクを施す想像力、表現力、手先の器用さや手際のよさなどがヘアメイクアーティストに求められます。
ヘアメイクアーティストの資格
ヘアメイクアーティストになるのに『美容師免許』は必要?
ヘアメイクアーティストとしてヘアセット、メイクをする場合、国家資格の『美容師免許』が必要です。
「ヘアメイクさんはハサミを使うことがほとんどないので美容師免許は必要ない」と思っている人は少なくないようですが、ヘアセットに関しては美容師法という法律により美容師免許が必要になります。
美容師免許はカットするためだけのものではなく、結髪(ヘアセット)のためにも必要なのです。
美容師法(昭和32年6月法律第163号)
1定義
美容師は「美容を業とする者」をいい、美容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。
美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。
美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」とされている。美容師がコールドパーマネントウェーブ等の行為に伴う美容行為の一環としてカッティングを行うことは美容の範囲に含まれる。
また、女性に対するカッティングはコールドパーマネントウェーブ等の行為との関連を問わず、美容行為の範囲に含まれる。染毛も理容・美容行為に含まれる。業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。また、美容師が美容を行う場合には器具やタオル等を清潔に保たねばならない。
美容師免許は専門学校や短大、通信課程などで2~3年学び、国家試験に合格することで取得することができます。
ヘアメイクアーティストとして活躍するためには豊富なヘアセットとメイクアップの知識と技術が必要です。
ヘアメイクアーティストにとって美容師免許取得はあくまでスタートラインです。
プロダクションや美容室でアシスタントとして働いたり、活躍するヘアメイクアーティストに弟子入りするなど経験を積んだ後、やっとヘアメイクアーティストとしてのキャリアがスタートします。
一人前のヘアメイクアーティストになるには長い時間と経験、知識、技術が必要になるため、簡単ではありません。
その他メイクアップアーティストの資格
前述でヘアメイクアーティストになるには「美容師免許」が必要であるということを述べましたが、ほかにはどのような資格があるのでしょうか。
ここではその他にあると便利なヘアメイクアーティストの資格についてみていきます。
日本メイクアップ技術検定
一般社団法人 JMA(日本メイクアップ技術検定協会)が定める正しいメイク基準を基本とした試験が『日本メイクアップ技術検定』です。
国際的に通用するメイクアップアーティストの育成を目的とし、1級・2級・3級に分かれて実施されています。
美容業界で働きたいと思っている人や、スキルアップのために資格を取得している美容業界ですでに働いているヘアメイクアーティストが取得します。
3級は受験資格はありませんが、2級は3級合格者のみ、1級は2級の合格者のみ受験することができます。
しかし3級と2級は同時に受けることができます。
1級の合格率は20~40%と難関であるため、1級を持っていれば自分のスキルを証明することができます。
この試験は春と秋の年2回実施されており、3級・2級は協会認定美容学校生は学校で受験することもできます。
試験内容はすべて実技のみで構成されています。
2級…いくつかの指定項目をクリアしたメイクアップのテクニックの実技
1級…モデルの悩みや要望を正しく聞き、希望のイメージに仕上げていくメイク接客試験
一般社団法人 JMA|日本メイクアップ技術検定協会 (jma-makeup.or.jp)
IBF国際メイクアップアーティスト認定試験
一般社団法人 国際美容連盟(IBF)が主催する、国際的に共有できるメイクアップに関する知識、技術の基本を理解し、実際にメイクアップすることができることを証明する資格が『IBF国際メイクアップアーティスト認定試験』です。
IBFはアーティストの活動サポートも行っており、技術向上セミナーや就職支援をしている連盟です。
資格取得者は就職や開業、フリーランスとしての活動などに関わる様々な支援を受けることができます。
試験は年4回実施されており、筆記試験は在宅受験のみの場合と会場試験とがあります。
受験資格はIBFが指定する各スクール所定のカリキュラムを終了し、修了証書を持っていることが条件となります。
試験内容は筆記試験が5問、実技試験が1課題あり、実技場モデルが必要です。
IBF国際メイクアップアーティスト認定試験 │ 一般社団法人 IBF国際美容連盟 (ibf-japan.com)
ヘアメイクアーティストに求められるスキルと人間性
ヘアメイクアーティストは、クライアントのイメージに沿ったメイクのできる優れた技術と感性、化粧品や肌の知識などが求められる職業です。
クライアントのイメージを形にするのが仕事ですが、その要望を聞きつつ、そこにどれだけ自分だけのアイディアや技術を取り込めるかが求められるため、バランス感覚も大切です。
また完全実力社会なのでこの世界でトップアーティストとしてやっていこうと思うと相当な努力と忍耐力が必要です。
美容やファッションに興味があり、好きでないと続けられない仕事です。
さらに常に人とかかわる仕事のため人が好きであること、コミュニケーション能力が必要です。
メイク中の気遣いができることも大切です。
仕事の現場は立ち仕事が多く、重い荷物を運ぶこともあるため体力も求められます。
要望に応えながら自分の色を出すバランス感覚
ヘアメイクアーティストの仕事は自分の好きなヘアメイクをするのではありません。
一番求められるのはクライアントの要望に応えられることです。
しかし、ただ要望に応えるだけではほかのヘアメイクアーティストとの差別化をはかることはできません。
クライアントが求めるイメージを押さえつつ、自分ならではのアレンジを加えられることが求められます。
ある程度自分の技量に任されているなら自分のアレンジをたくさん織り込んでいく、イメージ通りの仕上がりを求められているならその通りに仕上げるなど、その場その場で自分が求められていることを敏感に素早く察知できる能力が必要です。
美容やファッションに興味があり、流行に敏感であること
美容やファッションに興味があればあるほどヘアメイクアーティストとしての仕事をいつまでも楽しむことができ、自分自身を高め続けることもできます。
美容やファッションへの興味は学び続ける姿勢に転換できるため、美容に関しての知識も身に付き、自分自身へのメイク技術の向上にもつながります。
メイクにもファッションにも正解はなく、常に変化し続けるものです。
トレンドを追いながら、ヘアメイクアーティストとしての経験や知識からの情報をもとにさまざまなメイクの提案ができればより良い仕事につながります。
気遣い・コミュニケーション能力
ヘアメイクの対象は芸能人から一般人まで幅広く、どんな人とも自然なコミュニケーションを取れることが求められます。
クライアントのイメージをヒアリングしながら相手をリラックスさせられるといいです。
また雑誌や映画、ショーの現場では多くのスタッフと連携しながら仕事をするため、周囲への気遣いや場の空気を読む力も求められます。
観察力
ヘアメイクを施すことによって、クライアントの魅力を最大限引き出し、輝かせるのがヘアメイクアーティストとしての仕事です。
メイク対象者をよく観察し長所やコンプレックスに気づくことができればその人の魅力を最大限引き出すことができます。
撮影やショーの現場では、他の出演者も含めて全体の動きを読み取ることができる視野の広さも求められます。
奉仕精神
ヘアメイクアーティストという職業は名前こそ華やかですが、ほとんどが表舞台に立つことのない裏方仕事です。
そのため、誰かのために一生懸命になったり、人を輝かせることに喜びを感じられなければ務まりません。
自分のセンスやスキルを人のために使いたいと思う奉仕精神のある人ほどやりがいを感じられる仕事です。
自己管理能力
ヘアメイクアーティストは朝が早かったり夜遅くまで仕事だったり、撮影やショーで現場に立ちっぱなしのことも多く、メイク道具などの思い荷物を運ばなければならなかったり、体力勝負の仕事です。
厳しい現場でも体調を崩さないよう、普段から運動を心掛けて基礎体力を養っておくなどの自己管理能力はこの業界で長く働くにあたって不可欠です。
また完全に実力社会のこの業界にとってセルフプロデュース能力が必要です。
他のヘアメイクアーティストよりも優れた技術を持つためにどれほど努力をしていて、いかに自分を高めていけるかが成功のカギです。
アシスタント時代は給料的にも体力的にも厳しいことが続きますが、そこで根を上げることなく未来の自分を信じて努力し続けることが求められます。
自分のセンスを磨く努力と身なりを整える自制心
人に美しくメイクやヘアセットをするプロであるヘアメイクアーティストがだらしない体型や格好、センスのない服装をしていたら、そのヘアメイクアーティストが施すヘアセットやメイクにも説得力に欠けます。
そのため自分自身の身なりをきちんとしておくことも大切です。
体型や自身の肌の手入れ、服装など自分自身のキレイを作ることを怠ってはならないのです。
クライアントに素敵な人と思ってもらえれば、またお願いしたいと次の仕事に繫がることもあります。
ヘアメイクアーティストの働く現場
一般人にも芸能人にも関わることのあるヘアメイクアーティストですが、実際に働く職場はどのようなところなのでしょうか。
ここではヘアメイクアーティストの主な勤務先についてみてみます。
CM、テレビ、映画など映像現場
撮影現場に入り、出演者に対してヘアセットやメイクをします。
撮影が始まる前にメイク道具を持って入り、対象者のマッサージや保湿などの事前ケアを入念に行います。
ベースを作ってからクライアントに求められるイメージに合ったセットとメイクを施します。
ドラマに出演する女優や俳優のヘアメイクを担当するときはストーリーや内容を把握したうえで監督や演出家の意向を理解し、それに合ったヘアメイクをおこなう必要があります。
ヘアセットもメイクも行うため、手際の良さが重要です。
髪を巻きながらベースメイクをするなど、最短で美しく仕上げる方法を見極める必要があります。
撮影中は常に同席し、メイク崩れがあれば細かく直してキレイのまま保つことも重要な役割です。
広告や雑誌などの撮影現場
広告のポスターや雑誌などのスチール撮影現場でも、ヘアメイクアーティストは活躍します。
クライアントの意向をヒアリングし、企画やイメージに合わせながらモデルの魅力が引き立つように仕上げていきます。
雑誌やメイク特集であれば、その時の流行を反映することも重要です。
広告や雑誌の特集の撮影では、PRしたい商品があるため、その商品をどうPRしたいか踏まえたうえでヘアセットやメイクをして聞く必要があります。
撮影に立ち会い、必要であればメイク直しをおこないます。
ファッションショーやイベントのヘアメイク
ショーの出演者にヘアセットとメイクを施します。
ショーの場合はランウエイや舞台で映えるように、やや派手目のメイクや個性的なヘアセットに仕上げるのが一般的ですが、衣装やショーの全体の雰囲気を合わせることも重要です。
衣装に合わせて次から次へとヘアメイクを仕上げる必要があるため、スピーディでほかのスタッフと連携を取りながら作業を進めていくことが求められます。
結婚式場でのヘアメイク
ヘアメイクアーティストの中には結婚式場やブライダルサロンで働く人もいます。
新婦のヘアメイクに加えて、ドレスや和装の着付けもおこないます。
また新郎新婦の結婚式当日の身の回りの世話もヘアメイクアーティストの仕事です。
常に新郎新婦に気を配り、一生に一度の結婚式で美しい状態をキープできるように気を遣います。
緊張している花嫁に自然体でいられるようにリラックスさせるようコミュニケーションをとることも求められます。
美容室や写真館での一般人のヘアメイク
成人式や卒業式、結婚式やパーティーなどのイベント時にヘアメイクをプロにお願いする人も多くいます。
PTOに合わせたヘアメイクでなおかつお客様の希望に沿って仕上げることが求められます。
最近では就活用の写真撮影のためのヘアメイクアーティストも需要があります。
アートメイク・特殊メイク
映画やドラマなどの撮影で俳優の顔や体にさまざまな人工物をくっつけ、別の体や顔に作り上げる特殊メイクを手掛けるヘアメイクアーティストもいます。
怪物のような顔や傷跡、細身の人を太らせたりと全身を作り上げるメイクも多く、一つのメイクに数時間かかることは珍しくありません。
一般的なヘアメイクと異なるため、専門学校などで特殊メイクを専門い学ぶ必要があります。
また本場のロサンゼルスなどで修業をしたのち、活躍するメイクアップアーティストも少なくありありません。
まとめ
今回はヘアメイクアーティストについてまとめました。
〇ヘアメイクアーティストになるには『美容師免許』が必要
〇ヘアメイクアーティストを目指すなら『日本メイクアップ技術検定』や『 IBF国際メイクアップアーティスト認定試験』がある
〇ヘアメイクアーティストに向いているのは美容に興味があり、コミュニケーション能力や体力がある人が求められる
〇ヘアメイクアーティストの働く現場はCMなどの媒体撮影、映画やドラマ、ショーやブライダル、写真館などさまざまであり、ヘアメイクする相手も一般人から芸能人までさまざまである
ヘアメイクアップアーティストを目指す人はぜひ参考にしてみてくださいね。