体力仕事が多い、上下関係が厳しい、ノルマがキツいなど、美容業界にはブラック企業が多いというイメージがつきものです。
働きながらキレイになれる、好きなブランドにたずさわれる、華やかな仕事がしたいという思いから美容業界に入っても、仕事が合わずにすぐ退職してしまう方が多いのも実情です。
なぜ美容業界はブラック企業が多いと言われているのか、どんな点がキツいのかを確認しておきましょう。さらにブラック企業の見分け方、入社後に後悔しないための確認事項について紹介します。
美容業界がブラック企業と言われる理由6つ
美容業界にブラック企業が多いと言われる理由を6つ紹介します。
- 給料や賞与が低い
- 残業や拘束時間が長い
- 体力仕事が多い
- ノルマが厳しい
- 上下関係が厳しい
- 雇用が不安定
具体的にはどのような理由で評判が悪いのか詳しく見ていきましょう。
給料や賞与が低い
美容業界の悪い評判の中でも最も多いのが「給料や賞与が少ない」というものです。
美容師や美容部員、エステティシャンなど、美容業界では最初はアルバイトとして雇用されることも多いです。研修期間は最低賃金に近い時給で働かなければならないケースもあり、都心で一人暮らしをしている方だと生活していくのは厳しいでしょう。
美容業界は残業や休日出勤も多い労働環境ですが、残業代が給料に含まれている、休日出勤は手当てがつかないということもあります。
契約社員や正社員になれたとしても高い給料を得られるわけではなく、手取り18万円以下の職種も少なくありません。同じくらい低い給料でも美容業界より労働環境がいい仕事は多く、仕事内容と給料が見合わないという理由で離職してしまう方もいます。
残業や拘束時間が長い
美容師、エステティシャン、美容部員などは拘束時間が長く、残業も多いです。
決められている労働時間より前に出勤して店内の清掃をしなければならない、予約が入れば無条件に勤務時間が延長される、指名されれば休日でも出勤しなければならないなど。
閉店時間に仕事が終わるわけではなく、施術や接客が長くなればその分働き続けなければなりません。その後閉店作業やミーティングなどをしていると、帰宅するのは深夜になることもあります。
このようなブラック企業で働いていると離職率も高くなってしまいますが、誰かが辞めるとその人員を補充するまで誰かがさらに長く働かなければなりません。中には人件費削減のためにギリギリの人員だけでシフトを回しているブラック企業もあり、休みたくても休めない状況に苦しんでいる方もいます。
体力仕事が多い
美容業界、中でも接客や販売の仕事は体力仕事が多く、長く続けられないと感じている方が多いです。
一日中立ちっぱなし、ときには中腰だったり無理な姿勢で接客をしなければならない美容師の仕事はとくにハードです。休憩時間が短い、休日が少ないなどの理由で日頃の疲れを取り除くこともできず、限界が来て離職してしまうという方も。
商品の管理、エステの機器など重たいものを運ぶ機会も多いです。体力に自信があっても、長く働き続けるとなると話は別です。仕事内容が好きでもからだが追い付かず、離職せざるを得なくなってしまうかもしれません。
ノルマが厳しい
美容部員や販売、営業などの職種の場合、ノルマが課せられることもあります。このノルマを達成できなかった場合は自身でその商品を購入しなければならないかもしれません。
高価な化粧品や美容食品、美容機器などを買わされ、その企業の給料が高くてもノルマの支払いで消える可能性もあります。社割で好きな商品を安く買えるというメリットもありますが、毎月のこととなると負担になってしまいます。
また、ノルマを達成するために無理に売り込んだり、知人や友人に売りつけて信用をなくしてしまうことも。人間関係に傷が入る、自分自身の精神もすり減ってしまうので、ノルマの有無は十分確認しておく必要があります。
上下関係が厳しい
美容業界では上下関係が厳しい職場が多いです。エステサロンなどは体育会系の人間関係が出来上がっているところも多く、先輩が絶大な権力を持っている、気に入られなければ昇給も昇格も望めない、「勉強」と称して時間外の仕事や雑用を押し付けられることも少なくありません。
技術や資格の有無ではなくやる気や根性、先輩との相性などで昇格が決まることもあり、このような理不尽さに耐えきれずに辞めてしまうという方もいます。
下積み時代は逆らいにくく、また求人ページや面接の段階ではあまりこのような点はチェックしにくいため、入社してから上下関係、人間関係についていけなくなるということもあります。
一方で、「女性が多い職場はドロドロしている」とよく言われますが、一概にそうとは言えません。女性同士だからこそあっさりとした人間関係が形成されていたり、女性ならではの不調をカバーしてくれたりなど、女性が多い職場の方が働きやすいと感じる方もいます。
いずれにしても企業の人間関係は入社してからではないと判別しにくいポイントです。
雇用が不安定
美容業界の雇用は非常に不安定です。
安定した雇用形態である正社員を目指す方は多く、それは美容業界でも同じことです。
ですがエステサロンなどでは最高の雇用形態が契約社員止まりであることも多いです。どんなにがんばっても正社員には慣れず、昇格や昇給も望めません。一定の契約期間が経過すると企業の都合で契約を打ち切られてしまう可能性もあります。
アルバイトや派遣社員など美湯業界の雇用形態はたくさんありますが、安定して働き続けられる、長く安心して働ける見込みは低いです。
また、契約社員や正社員を募集していると求人ページに記載されているにも関わらず実際に面接を受けるとアルバイトでの採用を打診されることも少なくありません。
美容業界ではこのように求人ページに記載されている内容と面接時の条件が違うということが多いので、安易に飛びつかないよう慎重に転職活動をすることが大切です。
美容業界の中でもブラック企業が多い職種
美容業界と一口に言っても、接客、販売、サービス業から、企画、開発、研究などのデスクワークの仕事などさまざまな仕事があります。
美容業界の中でもとくにブラック企業が多いと言われている職種についてチェックしてみましょう。これらの職種に就きたいと思っている方は、ブラック企業に引っかからないように注意する必要があります。
美容師
美容業界の中でもとくにブラック企業が多いと言われているのが美容師です。
美容師は、
- 体力がいる仕事が多い
- 給料が安い
- 休みがとりにくい
- アシスタントの期間が長い
などの理由で離職してしまう方が多いです。
とくに、多くの美容院では美容師は最初はアシスタントとして働くことになります。ハサミを持つことはできず、店内の清掃や広報活動、街に出て通行人に声をかけるなど、雑用を多くさせられることも。
この期間が長かったり、アシスタント期間は時給制だったりするとせっかく厳しい国家試験に合格したのに…と、働き方のギャップに疲れて離職してしまいます。
アシスタントからスタイリストに昇格しても仕事内容がハードであることは変わらず、よりよい条件の店舗に転職する、自分の好きな働き方をするために独立するという方も少なくありません。
エステティシャン
エステサロンは非常に数が多く、マッサージから最新の機器を取り入れたもの、体の部位別、悩み別など、さまざまなエステサロンの求人が出ています。
しかし、エステサロンも
- 体力がいる仕事が多い
- 残業や拘束時間が長い
- 給料が仕事内容に合わない
- 上下関係が厳しい
などの理由でブラック企業が多いと言われています。
マッサージなどの施術は力がいりますし、一日中立ちっぱなしなので非常にハードな仕事です。お客様の予約時間、施術内容によっては残業をすることも多く、それでいて残業代は給料に上乗せされないということも。
エステサロンはとくに体育会系の上下関係が形成されていることが多く、経営者が精神論ばかりを言って技術を正当に評価してくれないという不満が出ることもあります。
化粧品の営業・販売
化粧品の販売や営業も美容業界の中では厳しい職種です。店舗で化粧品をお客様に販売する美容部員、化粧品を売っているバラエティショップなどに化粧品を置いてもらうよう営業する営業部員のどちらでも、厳しい条件が多いと思っておきましょう。
- ノルマが厳しい
- 接客をし続けなければならない
- いろいろな店舗に出張しなければならない
などの点がキツくて離職してしまう方も多いです。ノルマを達成できないと社員全員の前で叱責される、人間関係が悪くなる、また、自分で買い取らなければならないなど、トラブルの元になりやすいです。
美容部員の場合は常にお客様の要望に応えられる接客をしなければならないため、精神的に休まる暇がないことも。
営業部員の場合はさまざまな店舗に営業に出向いたり、置いてもらっている店舗の売り上げなどを確認しに行かなければならず、落ち着いてデスクワークはできないことがほとんどです。
ブラックな美容業界で働き続けるには?
美容業界はブラックな企業が多いですが、それでも美容にたずさわる仕事が好き、取得した資格を活かして働きたいという方のために、美容業界で働き続けるためのポイントを紹介します。
現状に不満を感じているものの美容業界での仕事を続けたい方はぜひ参考にしてください。
昇格できるように努力する
まずはその企業の中で昇格できるように努力すること。
昇格すれば昇給したり、比較的休みを取りやすくなったり、待遇をよくするために内部から改善していくこともできるかもしれません。
ですがその分仕事内容が増えて残業が多くなる可能性も。
評価制度がきちんと整っていないとどんなに努力しても認められず、不満ばかりが募ってしまうかもしれません。資格を取得したり技術を磨いたり指名を取ったりしても、先輩に気に入られなければ意味がないというブラック企業の場合はこの方法は効果的ではありません。
真面目な方ほど「周囲ががんばっているから自分もがんばらなければ」と無理な働き方をしてしまう可能性が高いです。おかしいと思ったら別の職種で働いている友人に相談してみることも大切です。
同業種で好待遇の企業に転職する
労働環境を手っ取り早く改善するには、同業種で今より好待遇の企業に転職するのがおすすめです。
どんなに働いていても状況が改善しなさそうなブラック企業に勤めている方は転職を検討しましょう。
現在の職場の不満を明確にして、それよりもいい条件を提示してくれる企業を探してください。残業が少ない、歩合率が高い、基本給が高い、産休や育休制度が整っているなど、今だけでなく将来も長く働き続けられる職場かどうか見極める必要もあります。
ただし、前述したとおり美容業界の求人は求人内容と実情が違うことがほとんどです。よい条件だと思って面接を受けたのにまったく違う条件を提示された、入社してから求人ページの内容とは違う仕事内容を押し付けられたというケースも少なくありません。同じ失敗を繰り返さないためにも、転職活動は慎重におこなう必要があります。
独立開業を目指す
美容業界で長く働き続けるためには独立開業も視野に入れる必要があります。
独立開業すれ上下関係の厳しい環境に悩まされたり、ノルマのストレスに苦しんだり、残業の長さに不満を感じることもありません。すべて自分の好きなように決められます。
メニューや経営方針、コンセプトも自分で決められるので、現在働いている企業の経営方針に不満があるという方にも独立開業はおすすめです。
しかし、すべての人が独立したから成功できる、満足できるというわけではありません。反対に顧客をつかむのが難しく失敗してしまう可能性もあります。無理のない働き方ができても収入が減り、経営を続けられなることも。
独立開業して成功するのは、指名されることが多い実力も人気もある美容師やエステティシャン、美容部員だけだと思っておきましょう。リピーターを獲得したり、経営について学ぶことも大切です。
面接時にブラック企業を見分ける方法
美容業界の企業の面接を受ける際、その企業がブラック企業か見極めることは大切です。
入社してからブラック企業だったことが判明するとまた一から転職活動をしなければなりません。短い期間の職歴がたくさん並んでいる履歴書は企業からの信用度を下げる原因にもなってしまいます。
面接の段階で不安な点がある場合は、採用を辞退して別の企業の求人に応募することも視野に入れましょう。
雇用条件や評価制度を確認する
まずは雇用条件、評価制度をきちんと確認しましょう。
求人には正社員、契約社員を募集していると書いているのに、実際に面接を受けるとアルバイトなどの不安定な雇用条件を提示される可能性もあります。
試用期間のみアルバイトなら試用期間はどれくらいなのかをしっかり確認してください。
昇格、昇給の評価制度も正当なものか面接の段階で確認すべきです。明確な評価基準を提示してくれない場合、先輩や店長の気分次第、お気に入りになるかどうかで昇格が決まってしまう職場かもしれません。
お金の話は面接では聞き出しにくい、マナー違反と思っている方も多いですが、面接の段階で遠慮してしまうとその後後悔してしまいます。遠慮せず、しっかり確認してその企業を見極めましょう。
スタッフの人間関係をチェック
面接の段階でスタッフの様子をチェックしてください。
スタッフの元気がない、上下関係が必要以上に厳しい、適当に対応されるなど、人間関係が悪い様子が垣間見えることもあります。自分の性格に合う雰囲気かどうかをよく確認しましょう。
面接を受ける前に店舗をチェックしてみる、店舗の口コミをチェックしてみるのもおすすめです。
体験入店で現状を確認
美容院などでは、本採用の前に体験入店ができるところもあります。
より企業の様子をしっかり確認してから働きたいという方はこの体験入店も活用しましょう。
清掃などの雑用を押し付けられることが多い、残業や休日出勤が当たり前になっている、人間関係が悪いなどなど、自分と合わないと感じる点を本採用の前に見極めることができます。
しかし体験入店制度を採用している店舗は少なく、理想の店舗になかなかたどり着けない可能性もあります。
精神論ばかりの経営者に注意
面接担当や経営者が精神論ばかりを言っている企業には注意しましょう。
このような企業は、実力よりも長い時間働くこと、休日も出勤することなど、企業にとって都合のいい人材ばかりを重視する傾向があります。
経営者自身が若いころに厳しい下積みを経験したために「若い人材も苦労すべき」と考えている場合も。
このような企業に入社すると理不尽な仕事を押し付けられたり、無理な働き方を強要されて体や精神を壊してしまう可能性もあります。
精神論ではなく具体的な経営方針やコンセプト、評価基準などをしっかり提示してくれる企業を選ぶようにしましょう。
ブラックな美容業界に気を付けて転職しよう
美容業界はブラック企業が多いというのはあながち間違いではありません。
仕事内容がハードなものの給料が少なく、休みたいときに休めないなどさまざまな悪い条件があります。人間関係やノルマなどに苦しみ、結果憧れの美容業界に入ったもののすぐ離職してしまう可能性も。
ですが美容業界のすべての企業がブラックというわけではありません。中には従業員の働きやすさを重視して、人材を大切にしてくれる企業もあります。求人ページや面接で見極めて、理想の働き方ができる企業を探しましょう。