新型コロナウイルスの影響により、健康意識が人々の間で高まり、注目されるようになったのが「免疫ケア」。
感染症対策として政府からも免疫の維持の推奨や、メディアなどでもよく取り入れられている言葉です。
免疫力が下がると、アレルギー症状や肌荒れ、病気になりやすくなってしまいます。
その一方で、免疫力が上がりすぎることによる自己免疫疾患や花粉症などが先進国では多く見られるようになっています。
今回は免疫力や免疫ケアの方法など『免疫』について、詳しく解説していきます。
免疫力を高める・バランスを保つ方法も紹介しているので、参考にしてみてください。
免疫とは?
免疫とは、細菌やウイル、汚染物質など、外部から入ってくる有害物質に対して抵抗し排除するために、ヒトに備わった身体の仕組みです。
免疫には大きく分けて2種類の免疫があり、『自然免疫』と『獲得免疫』があります。
自然免疫とは、生まれつき身体に備わっている免疫であり、体内に異物が入ってきた際にすぐに異物を攻撃する機能です。
自然免疫にはマクロファージ、NK細胞、好中球、マスト細胞などがあります。
獲得免疫とは、以前に身体に入り込んだ異物と同じ物質が入り込んだ場合、過去の記憶を元に異物を攻撃する機能です。
病原菌が入ってきてから1~2週間かけて抗体を作ります。
一度作った抗体は免疫細胞をいつでも使うことができるのも、獲得免疫の特徴です。
代表的な獲得免疫には、樹状細胞、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、B細胞などがあります。
これらの免疫は、サイトカインというタンパク質を分泌し、免疫細胞を活性化させ機能します。
ワクチン特定のウイルスに対してのみ効果を持たない一方で、免疫力を上げることによって高い効果はないものの幅広いウイルスなどの有害物質に対抗することができます。
そのため長期的に健康を維持するには、ワクチン接種だけでなく、免疫ケアの両方をおこなう必要があります。
しかし免疫細胞は加齢やストレス、睡眠不足や食生活の乱れなど、ちょっとした生活習慣の悪化で下がってしまいます。
一方、衛生環境が整っている先進国では、免疫作用の暴走が起こることで発生する『自己免疫疾患』や『アレルギー』、『炎症性疾患』が問題となっています。
これらは安全な食べ物や物質に対して、誤って抗体がつくられるため起こる症状です。
これらは自己免疫が暴走して起こる疾患であり、身体の中で炎症が起こった状態です。
アレルギーや自己免疫疾患だけでなく、糖尿病などの生活習慣病、がんなどの多くの疾患は身体の中で起こる炎症が原因であるということがわかっています。
免疫力は高い方がいいと思われがちですが、高すぎると逆に疾患となります。
これらの高くなりすぎた免疫力を抑え、過剰な免疫力の暴走を阻止し、適正化する免疫細胞があり、リンパ球の1種である『抑制性T細胞』があります。
抑制性T細胞が正常に働くことにより、過剰な免疫力を鎮めることができます。
過剰な免疫反応を抑制することにより、アレルギーや自己免疫疾患などを抑制することができます。
先進国でこれらの病気が増えているのは、抑制性T細胞が正常に機能していないために起こるのです。
ヒトの身体に起こる免疫力は、バランスが大切です。
免疫力を上げるには?
免疫力はバランスが大切であると前述しましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、長期的な健康や美肌を維持するためには、ワクチンの摂取だけでなく、免疫ケアも大切です。
では、日常生活でおこなえる免疫ケアにはどのような方法があるのでしょうか。
質の良い睡眠
免疫ケアを行うには、質の良い睡眠を取ることも大切です。
睡眠時は副交感神経が優位に働き、リラックスすることができるため、免疫細胞の活動が活発になります。
質の良い睡眠とは、朝まで熟睡できること、目覚め良くスッキリ起きられること、日中に眠くならないなどの条件を満たした睡眠です。
同じ時間に寝て同じ時間に起きる、朝日をしっかり浴びる、寝る2~3時間前に入浴する、寝る直前の飲酒や食事を避ける、寝る前のスマホやテレビを控える、睡眠時の室温や湿度を適切に保つことが大切です。
またストレスを溜めると交感神経が優位になってしまうため、ストレスを溜めない生活を心がけることも大切です。
体温・代謝を上げる
代謝や体温を上げることは、免疫力をアップさせるのに効果的です。
T細胞やB細胞などのリンパ球は、体温が上がると増えて活発に活動するようになります。
免疫細胞が活発に働くのは体温が36.5℃程度であり、1℃体温が下がるたびに免疫力が30%ほど下がるといわれています。
逆に1℃上がると免疫力が5~6倍ほどになるため、風邪をひいた時に体温が上がるのは、免疫細胞を活性化させ、病原菌を退治するためなのです。
また体温が上がると副交感神経が優位になりリラックス作用があるため、ストレスを軽減させる効果もあります。
1日10分程度でよいので、汗をかくような運動やしっかり湯船に浸かるという習慣を作ると、免疫ケアに繋がります。
バランスの良い食事
免疫ケアには、腸内環境を整えることも大切です。
腸内には6~7割の免疫細胞が存在し、善玉菌・悪玉菌・日和菌などの腸内菌が存在します。
善玉菌には免疫細胞と一緒に悪玉菌の侵入や増加を防ぎ、有害物質を体外に排出させる機能があります。
そのため善玉菌が多いと免疫力が上がります。
また日和菌は善玉菌・悪玉菌の多い方の味方をするため、腸内の善玉菌が多いとより一層免疫力が上がります。
腸内の善玉菌が減ってしまう原因は加齢やストレス、抗生物質の服用など、様々な原因がありますが、食生活も大きく影響しています。
免疫力を上げるには、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ミネラル、タンパク質を積極的に摂ることをオススメします。
卵や大豆製品、乳製品、肉や魚介類などのタンパク質、ココアや牡蠣、するめ、海草類に含まれるミネラル、野菜や柑橘類、ナッツなどに多く含まれるビタミン類を積極的に摂取するのがオススメです。
また「リポポリサッカライド(LPS)」という成分に、免疫力を強化する効果があることがわかっています。
LPSが多く含まれる食品として、玄米や皮の付いたレンコンなど、穀物の胚芽や野菜の皮に多く含まれているため、積極的に皮付きの野菜や玄米を摂取するのも、免疫力を高めるのに効果的です。
また、めかぶやわかめなどの海藻類、ホウレン草などの葉野菜、シイタケなどのキノコ類にも多く含まれています。
免疫力を上げたいときや、体調がすぐれないときはLPSの多い食品を積極的に摂取するのもオススメです。
ストレスを溜めない
ストレスは免疫細胞の働きを低下させると前述しましたが、免疫力を高める一番簡単な方法は、よく笑うことです。
リラックスしたり、笑うことによって副交感神経が優位になります。
笑うことによって『lgA抗体』という抗体の濃度が上昇し、免疫力を高めます。
lgA抗体には、体内に入った異物にくっつき、無力化させるという効果があります。
lgAは作り笑いによっても濃度を上昇させることができるため、ストレスが溜まっていたり、体調の悪い時などの笑えないときは、作り笑いや笑顔を無理やりでも作ることにより免疫力がアップします。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、『免疫ケア』という言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、免疫力が高すぎるのも病気になってしまいます。
免疫力にもバランスが大切であり、免疫のバランスを保つためにも、質の良い睡眠、適度な運動や入浴、バランスの良い食事、ストレスを溜めない生活を心がけることが大切です。