前回「乾燥肌のシーズン到来!乾燥肌の起こるメカニズムと原因について」で乾燥している肌の中ではどのような状態になっているのかということについて解説してきましたが、今回は乾燥によって引き起こされる肌トラブルについて解説していきます。
前回、保湿の大切さについても言及してきましたが、肌が乾燥していると思わぬ肌トラブルに悩まされることになります。
「脂性肌に悩んでいて極力保湿をしないようにしてきた」というのは、意外と保湿をしないことが原因だったりします。
一にも、二にも、肌の健康には保湿ケアは欠かせないので、乾燥以外の肌トラブルに悩んでいる人も参考にしてみてください。
乾燥によって引き起こされる肌トラブル
どの美容皮膚科の専門家でもスキンケアの基本は保湿といっているほど、保湿ケアは健康な肌を保つのに重要な役割を果たしています。
そのくらい乾燥によって引き起こされる肌トラブルは多くあり、何かしらの乾燥によって引き起こされているといっても過言ではありません。
鱗屑
白く粉を吹いたように肌が乾燥してしまうことを『鱗屑(りんせつ』といいます。
乾燥により角質層の結合力が弱くなり、カサカサになって白く粉を吹いたように見えることがあります。
肌表面に潤いがなくなり、柔軟性のないもろい肌の状態です。
鱗屑ができると化粧ノリが悪くなったり、お手入れ不足でだらしのない印象を与えてしまったり、進行すると肌にかゆみが生じる場合もあります。
かゆみ
乾燥によってターンオーバーが早くなりすぎることにより、かゆみが起こる場合があります。
ひどくなると肌に赤みが出たり、蕁麻疹になったりすることもあります。
表皮の一番外側の角質には、「天然保湿因子」があり、角質細胞の中では、油分と水分が交互に何層にも重なり合い水分を保持しており、「ラメラ構造」となっています。
油分と水分が重なり合うことにより、バリア機能を維持しているのです。
しかしこのバリア機能が乾燥によって破壊されてしまうと、紫外線や雑菌などの外的容認や外部ストレスに弱くなってしまいます。
その結果かゆみが出ることが多くあります。
またそのバリア機能を早く補正しようと角質を急いで作ってしまうため、ターンオーバーが早くなってしまい、未熟な細胞が肌の表面に上がってきてしまい、さらにバリア機能の低下、乾燥をもたらしてしまいます。
乾燥→バリア機能の低下・ターンオーバーの乱れ→悪化という悪循環を起こしてしまい、かゆみがひどくなることがあります。
にきび
意外かもしれませんが、ニキビは乾燥と実は深くかかわっています。
乾燥肌は水分と油分のバランスが崩れた状態であり、水分不足を保とうと過剰に皮脂が出てしまい、これが悪化して乾燥によるニキビとなってしまいます。
肌の水分・油分のバランスが崩れると皮膚の常在菌のバランスも崩れてしまい、ニキビの原因「アクネ菌」の繁殖を促してしまうことがあります。
ニキビは思春期にできるものと思いがちですが、大人になってからできるニキビの原因は主に乾燥が原因であり、ニキビができたため頻繁に洗顔をしてしまうとさらに悪化するという事態を招いてしまいます。
敏感肌・インナードライ
乾燥によりバリア機能の低下、ターンオーバーが乱れることにより肌荒れが酷くなった状態が敏感肌です。
乾燥により、肌が敏感になってしまった肌を「乾燥性敏感肌」といいます。
服の繊維などの接触などのちょっとした刺激にも弱く、痒みや痛みが生じることもあります。
また肌の表面が脂っぽい、テカリが気になるという場合は肌の内部が乾燥している「インナードライ肌」といわれる状態に陥ります。
さらにあごのラインや口周りだけが乾燥し、Tゾーンだけがテカる「混合肌」と呼ばれる人も最近では増えてきています。
これらもエイジングケア・保湿ケア不足によって乾燥肌となり、敏感肌・インナードライ肌・混合肌の原因となってしまいます。
くすみ
くすみの原因は冷えなどによる血行不良や肌の糖化などの原因も考えられますが、乾燥によりメラニンの増加、ターンオーバーの乱れによりくすんでしまうことがあります。
肌の透明感や明るさ、うるおいが失われ顔全体が暗くみえる状態は、顔全体の印象をも暗くしてしまいます。
乾燥によりターンオーバーの乱れ、表皮の角質は硬くなってしまいます。
そのため化粧水などで外から水分を取り入れても浸透しづらくなってしまいます。
またターンオーバーが遅くなっても古い角質が剥がれ落ちて生まれ変わることができず、その結果くすんでしまうのが乾燥によるくすみです。
しみ
シミの原因はメラノサイトが過剰に働き、メラニンを生成することによって引き起こされます。
しかし、シミのできる原因は乾燥肌にも関係があります。
紫外線ダメージによってメラニンができても、肌のターンオーバーが正常であればメラニンは古い角質と共に剥がれ落ちていくので、肌の内部に留まるリスクを減らすことができます。
肌が乾燥していてターンオーバーが乱れることにより、くすみ同様、角質層が固く厚くなりメラニンが排出されず、シミの原因となってしまいます。
また肌のバリア機能の低下によってメラノサイトを刺激し、シミ・くすみの原因となってしまいます。
シワ
シワには肌に繰り返しついた折り目であり、表情の変化などによって何度も折り目が付き、年齢を重ねるとともにシワは増えていきます。
同じ年齢でもしわができる人とできない人の差には、肌の弾力が大きくかかわっています。
紙を折るとすぐシワになってしまい元に戻すのは一苦労ですが、スポンジは折り目を付けてもすぐに元に戻ります。
スポンジには弾力があるためシワになりにくく、肌であっても同じことがいえます。
肌に弾力を与える要因の一つが水分量であり、乾燥している肌であれば弾力がないためしわがどんどん増えていきます。
シワには大きく分けて「小じわ」「真皮シワ」「表情シワ」の3つがあり、とくに小じわは乾燥が原因で起きるシワです。
真皮シワ・表情シワも乾燥によって濃くなることがあります。
特に目元や口元は乾燥しやすく、目尻や口元のシワは乾燥が原因であることがほとんどです。
たるみ
肌のたるみは真皮・表情筋・皮下組織・皮下細胞などの衰えが原因で起こります。
特に20代の若い世代のほうれい線などのたるみは、特に乾燥が原因と考えられています。
たるみは本来ターンオーバーによって新しい肌に生まれ変わるはずの肌が、乾燥によるバリア機能の低下によって遅れが生じ、その結果肌がたるんでしまうのです。
乾燥によるシワの原因とたるみも同じです。
毛穴が目立つ
毛穴の悩みには詰まり、黒ずみ、たるみ、メラニン、開きなど、いくつかの種類があります。
毛穴が目立つことの原因は、いくつかの原因が重なり合っていることがありますが、いずれの場合も乾燥肌がひとつの原因となっている可能性が高いです。
特に詰まりや黒ずみの原因となってしまう角栓も、肌の乾燥が進み過剰に角栓が肥大してしまうために目立ってしまう場合が多くあります。
手荒れ
乾燥によって引き起こされる肌トラブルは顔だけに限ったものではありません。
冬場になると水仕事の多い人は手荒れや手湿疹に悩む人も多くいます。
これも肌の乾燥が主な原因です。
手荒れが重症化するとひび割れ、あかぎれ、手湿疹などが起こってしまいます。
さらにこれが重症化すると「皮脂欠乏性湿疹」という皮膚の病気になってしまいます。
皮膚のバリア機能の低下した状態で外部刺激を受けたり、異物が接触したり、病原菌が角質層に入ってしまうことにより引き起こされます。
皮脂欠乏性湿疹になり炎症が起こるとステロイド外用薬の治療が必要となるため、早めの皮膚科治療が大切です。
フケ
頭皮も皮膚の構造は顔と同じであり、外気の湿度・温度の低下やシャンプーやブラッシングによって頭皮がダメージを受けると乾燥肌となり、フケを発生させる原因となってしまいます。
頭皮の乾燥が進行すると女性でも薄毛になってしまうこともあります。
そのため頭皮も顔と同じように、乾燥ケアが必要なのです。
まとめ
大人ニキビや混合肌など、乾燥とはいっけん関係のなさそうな肌トラブルでも、実は乾燥肌によって引き起こされているという肌トラブルは多くあります。
いかに毎日の保湿によるターンオーバーの正常化、バリア機能の維持が大切かということに気づいてもらえたかと思います。
次回は具体的な保湿ケア方法について解説していきます。