華やかに見える美容部員という職業ですが、実はストーカー被害に悩む人が多い職業でもあります。
女性美容部員への嫌がらせ・ストーカーなどの迷惑行為は、「華やかな職業である」という理由はもちろんですが、変質者が寄り付きやすい環境なのです。
実際に
「美容部員の仕事は好きだけど、ストーカー被害に逢っていて転職を考えている」
「男性客からのいやがらせ行為によって、転職せざるを得ない状況に陥っている」
という美容部員も多いのです。
今回は、女性美容部員がストーカー被害に遭いやすい理由や対策について、解説していきます。
美容部員がストーカー被害に遭いやすい理由
美容部員の『はな』さんによると、美容部員を3年以上続けている女性であれば、1度くらいはストーカーまがいの人に遭遇するのだそうです。
なぜ、美容部員はストーカー被害に遭いやすいのでしょうか。
その理由として
●化粧品売り場の立地
●1対1の接客
という点があげられます。
女性ばかりの職場
化粧品を販売する美容部員は、女性の方が多い職場であることがほとんどです。
ジェンダーフリーの影響により男性の美容部員が増えたといえど、まだまだ女性がメインの職業であるのが美容部員です。
また、百貨店の化粧品売り場を見るとわかるように、美容部員に関わらず男性店員が少なく、警備員も少ないという特徴があります。
男性が少ない現場は威圧感や警戒心を感じにくく、ストーカーのターゲットを見つけやすい場所であるといえます。
女性従業員の多い職場で客からストーカーや性的ハラスメントを受けやすい理由として、男性より女性の方が立場が弱いとみなす性差別的な思考や、「客の要求を満たすのがサービス業だ」という顧客第一主義の思考なども、原因となっています。
化粧品売り場の立地
デパートの化粧品売り場は、多くの場合、1階にフロアがある場合がほとんどではないでしょうか。
デパートの入口から近かったり、食品売り場や他の階に行くのに向かいやすい立地であり、フラッと立ち寄りやすい場所にあるという点も、付きまとい行為が増えてしまう原因です。
目に入りやすい場所にある売り場であるため通行人を装いやすいという点も「ストーカーのターゲットとなりやすいのでは?」と言われています。
また、化粧品売り場ではパーテーションで区切られているだけで、壁に面していない売り場も多くあります。
アパレルショップの場合、壁に面した箱型の店舗が多いです。
アパレルショップのように閉鎖された空間では、わざわざその店に入らなければならず、フラッと気軽に入りにくいため、美容部員に比べストーカー被害に遭いにくいと言う方もいます。
百貨店の化粧品売り場は通路に面している売り場が多く、通路でブランド別に仕切っている事も多いので、歩くついでに声を掛けやすいという点も美容部員がストーカー被害に遭いやすい原因の一つであると言われています。
さらに、お客様が少ない場合、通路を通るお客様にも挨拶するというマニュアルがある職場もあり、勘違いされやすい立場にあるというのもストーカー被害に遭いやすい理由の一つです。
1対1の接客
美容部員の仕事は、実際に化粧品をお客様に施すタッチアップ、使用感を確かめてもらうハンドデモなどをおこなうことが多くあります。
タッチアップやハンドデモはお客様と美容部員が1対1でおこなうことが多く、カウンセリングから接客、お会計まで、一人のお客様に対し一人の美容部員が全て担当することが多くあります。
ストーカーになりやすい人の特徴として、思い込みが激しく妄想的という側面があります。
美容部員が「仕事」としておこなっている接客が、「自分に対する好意」と勘違いしている可能性もあります。
一人のお客様に対して長時間接客する美容部員は、相手が好意を抱いているという妄想を抱きやすく、自分の都合のよい解釈をされてしまいがちです。
また、1対1の接客であるため、他の従業員から異変に気付いてもらいにくいという点も、ストーカー被害を回避しにくい職種であるといえます。
美容部員へのストーカー被害の内容
美容部員に実際におこったストーカー被害には、どのようなものがあるのでしょうか。
美容部員へのストーカー行為で起こりやすいのは、従業員出入り口での待ち伏せです。
出勤時や退勤時の待ち伏せは、警察案件にもなり得ます。
また、勝手に差し入れを持ってきて受け取らなければ大声で怒鳴り散らされるなどの迷惑行為を受けた美容部員もいたようです。
差し入れの品も、既製品だけでなく手作りの料理を持ってこられたという美容部員もいます。
住んでいる場所や既婚の有無など、業務に関係のない不必要なプライベートについてしつこく尋ねられたり、目で明らかに異常に追いかけられることもあるようです。
さらには、お客様の声のコーナーで10枚に渡るメッセージを送りつけられたなど、迷惑行為を受けた美容部員もいます。
美容部員の業務への支障
しつこい付きまとい行為は、美容部員の業務にも支障をきたすことがあります。
一人の美容部員を独占したり、美容部員を精神的に追い詰める迷惑行為は、他のお客様への迷惑となり得ます。
例えば、買う気のない商品を手に取り関係のない話で美容部員を離さないなど、業務への支障をきたし本当に買う気のあるお客様への対応を妨げる事もあります。
また、ハンドデモを依頼しそのまま美容部員の手を握って離さない、というトラブルもあったようです。
実際にこれらの被害に遭った美容部員たちは、精神を病んで適応障害になってしまったり、職場でトラブルとなり退職していった人もいたようです。
美容部員の本音
美容部員の多くは、仕事にプライドを持って働いている方たちです。
大好きな自社の商品を、男性女性関係なく多くのお客様に知ってほしいと思っている美容部員は大勢います。
しかし、一部の迷惑行為をおこなう客によって、男性のお客様に嫌悪感を持つ美容部員が出てきているのも事実です。
ストーカー被害に遭った女性美容部員たちは、男性のお客様に対してどのように感じているのでしょうか。
以下のような声が聞かれました。
「ストーカーと間違われたくないのであれば、堂々と購入してほしい。本当に弊社の商品が好きなら会員登録をして購入してほしい」
「最近では口コミのレビューも充実しているので、ホントに勘違いされたくないのであればネットでも買える」
「やましい事がないのであれば、堂々としていればいい」
「母親や奥さん、彼女や女友達などの女性と一緒に来店してほしい」
「本当に商品を買う気があるのであれば、好きなTikTokerやYouTuberなどを提示し『こんな風にしたい』など、具体的に聞きたいことを準備してから来店してほしい」
「無料のキャバクラや出会いの場ではない」
「買う気がないなら来店しないでほしい」
「仕事だから丁寧に接客してるだけであり、お客様以外の何者でもない」
実際にストーカーや嫌がらせ行為を受けた女性美容部員に限らず、多くの美容部員がこのような意見を持っているようです。
企業のストーカー被害への取り組み
付きまといやストーカー行為は、女性美容部員への迷惑行為だけではなく、企業側からしても深刻なダメージです。
迷惑行為に対して「お客さんだから断れない」と、我慢している女性美容部員たちの退職に繋がりかねません。
化粧品メーカーは百貨店との連結を強化し、ストーカー行為に対するマニュアルやガイドラインの作成といった措置を取っている企業もあります。
三越伊勢丹は、お客からの迷惑行為へのガイドラインの作成をしています。
高島屋では、ハラスメント行為・発言への対応研修を実施しています。
大丸松坂屋は、百貨店社員による巡回を強化するなど、それぞれの大手百貨店は迷惑行為やストーカー行為防止に力を入れています。
迷惑行為を受けた女性美容部員からは「女性専用車両のように、男性専用コーナーを作ってほしい」という従業員もいます。
フランスなどのヨーロッパ、アメリカ、ASEAN諸国や他の東アジアでは、男性美容部員やレディボーイによる販売もおこなわれていますが、日本はまだまだ「美容部員は女性の仕事」と思われている傾向があります。
実際に「化粧品売り場に男性美容部員がいるのがイヤ」というお客様も、日本では多くいます。
このような場合、現場でのスタッフ同士のコミュニケーションが取れている職場であれば、異変に気付いた年配のベテランスタッフが、接客を交代するという措置が取られることもあります。
メンズコスメの需要増加により、男性も百貨店の美容部員から化粧品を買いたいという方は多くいます。
しかし、一部の迷惑客により女性美容部員が警戒し、本当に商品を求めている男性客が気を遣ってしまうという場合もあるようです。
まとめ
メンズコスメの需要が高まり、男性も百貨店でのブランドコスメを美容部員から買う方も増えている昨今ですが、需要の増加とともに女性美容部員へのストーカー行為が増えているのも事実です。
美容部員はまだまだ女性が多い職業であり、売り場の立地の都合や1対1の接客になることが、ストーカー被害を受ける原因ともなっています。
企業側も、迷惑行為への対策として、巡回やマニュアルの強化をおこなっていますが、男性の美容部員が増えれば状況は変わってくるかもしれません。
「美容の仕事は好きだけど、ストーカー被害で職を続けにくい…」と悩んでいる方は、『美容biz』で美容に関わる仕事を新たに探してみるのもいかがでしょうか。